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【下川鉱山】幻の「40高中」が眠る、忘却の土地

道道354号線 下川鉱山まで行く途中の風景

(▲ 下川町の中心街から鉱山地区へと伸びる道道354号線)

下川鉱山は三菱系の銅山であり、黄銅鉱のほか、黄鉄鉱、磁硫鉄鉱、閃亜鉛鉱などを産出した。
本鉱山は昭和16年(1941)に軍需産業として本格的な探鉱を開始したのを契機に、徐々にその規模を拡大していった。昭和49年(1974)には月産3万3千トンとなりピークを迎えるが、その後銅の自由化等により急速に採算は悪化。最盛期からわずか8年後の昭和57年(1982)には採鉱を終了、翌年には休山となり事実上の閉山に追い込まれた。※1

下川鉱山 選鉱所跡 手前には沈殿池も見える 周辺では下川鉱業所として今も鉱水処理を行なっている

下川鉱山の選鉱場跡。これは往時を偲ぶことのできる施設のうち、平成27年(2015年)現在も残るほぼ唯一の遺構である。
ちなみに、下川鉱山は精錬所を持たず、ここで選り分けられた鉱石は福島県の小名浜製錬所へと送られていた。

横断歩道その1

そしてここ下川鉱山を代表する風景といえば、これだろう。
全く何もない山奥の原野を突き進む道路に、突如として謎の横断歩道が出現するのだ。

横断歩道その2

選鉱所の基礎以外は何も残らないがゆえの、この風景。

横断歩道その2 別角度

往時はこの道路の両側に鉱員住宅が立ち並んでいたのだ。そして横断歩道が必要な程の人口と、交通量だった。

横断歩道その3

今となっては建物の基礎さえ無い、小鳥がチュンチュン鳴くばかりの原生林……とても当時の活況を想像できるものではない。事情を全く知らない者にとっては、完全に超芸術トマソンである。

横断歩道その2 正面より

私が訪れる少し前までは、ここには小学校と幼稚園の廃墟が残っていたのだが(菱光小学校と菱光幼稚園)、今となってはそれすらも無い※2。本当に無い無い尽くしでゴーストタウンとすら呼べない所に、こうして点々と横断歩道が残る異様な光景が見られるのが、ここ下川鉱山なのだ。

このように当時の面影をすっかり無くしてしまった下川鉱山ではあるが、実はこの横断歩道の他にも当時を物語る遺物が道路上に存在する。それが、以下に載せる「40高中」の道路標示だ。

下川鉱山_40高中

この「40高中」、その表示の意味は「高速車・中速車の最高速度を40km/hに制限する」というものだが、私も含めて今の30代以下の人は「そんな区分聞いたことが無い」という人が大半であろう。実は大昔、車両には以下のような区分があったのだ。

  • 高速車(最高速度60km):大型乗用車、普通自動車、250ccを超える自動二輪車
  • 中速車(最高速度50km):大型貨物車、250cc以下の自動二輪車
  • 低速車(最高速度30km):小型特殊車、原付

そしてこれらの区分は、平成4年(1992)11月に行われた道路交通法の改正によって撤廃されて今に至る。この改正により全ての自動車の法定速度が60km/hに統一され、ようやく今も皆がよく知る道路交通法の形になったのだ。

下川鉱山_40高中 別角度

しかしこの時、原動機付きの「自転車」である原付だけは改正から取り残される形となった。それから数十年の時が経ち、天皇陛下の御意志により平成が終わろうとしている現代となっても、未だに原付の速度制限が30kmのままなのは全てこの時の煽りである。

『車の流れに乗っていたと思ったら、いつの間にかキップを切られていた』
  な……何を言っているのか分からねーと思うが(以下略)”

などというのは原付あるある話で原付が敬遠される要因にもなっているのだが、「時代にそぐわない速度規制が~云々」の議論以前に、近年の度重なる排ガス規制※3によって原付そのものがこの世から完全に姿を消そうとしている※4。そしてそれは2020年頃に予定されているEURO5規制※5で、現実のものとなるだろう。


自動車における3つの速度区分が無くなり「40高中」がその語り部となったように、「原付」の表示もまた、古の時代を物語る道路上の遺物と化す日も近いだろう。

【廃墟Data】

探訪日:2015年5月下旬

状態:道路標示は全て健在。構造物は小学校の学舎と選鉱所の基礎のみが現存。

所在地:

  • (住所)北海道上川郡下川町班渓
  • (物件の場所の緯度経度)44°14'35.7"N 142°40'18.8"E(40高中)
  • (物件の場所の緯度経度)44°14'44.9"N 142°40'32.3"E(選鉱所)
  •  ※ 下記地図は40高中の場所を示す
  • (アクセス)国道239号線より、町立下川病院付近を南に折れ、道道101号線に入る。700m弱進むと「下川鉱山」へと続く道道354号線への案内(青看板)が見えてくるので、その交差点を左折し、道道354号線へと入る。そのまま9km程山の中を進んでいくと、選鉱所手前の対向車線側に「40高中」の道路標示が見えてくる。