北海道の赤平市にあるホテルの廃墟。大きな式場を併設し、地元企業の祝賀会や学校の同窓会、米寿・喜寿のお祝いなど主に地元の人々の祝い事に使われていたほか、仏式の葬儀も行なっていた。つまりここではいわゆる「冠婚葬祭」が執り行なわれていたわけだが、現地に残された当時の写真を見る限りでは、同窓会や長寿のお祝いが大半を占める中で「婚(結婚式)」だけがすっぽりと抜け落ちてしまっており、赤平という土地の高齢化・少子化を如実に感じさせる。
建物は北海道の廃墟にしては潰れずに良く持っている方である。しかし上の写真のように調理場の一部やエントランス付近は雪の重みに耐えかねて既に倒壊してしまっており、いつホテル本棟や式場が潰されてもおかしくない状態である。

廃墟へと通じる細い道を行くと、その先に特徴的な形の櫓(やぐら)が見えてきた。この櫓こそが「プリンス平安」を代表する遺物と言っても過言ではなく、こうして実際に目の当たりにすると抑えきれない興奮が湧き上がってくる。

櫓をくぐり、ホテル入り口までやってきた。建物の壁には「赤平観光センター」の文字が見える。
記事冒頭でも触れたように、建物そのものはまだ形を保っているものの、エントランスの雨避けは雪の重みによって大きく倒壊してしまっている。

最後は地元議員の懇親会会場として使われたようだ。
ちなみにこの「(中空知)ふるさと市町村圏」とは、昭和45年(1970年)に赤平市を含む5市5町で設立されたもので、政府が地域の振興整備を進めるために主導した広域市町村圏施策に基づく。「地域振興のため」と言えば聞こえは良いが、要は高度経済成長期のカネに群がった議員様の集まりだ。そしてそれはその後のバブル経済へと繋がっていく。
しかし彼らの精力的な働きがあってこそ、我々は今こうして全国各地に散らばるその遺産(スパガーデン 湯~とぴあや、伊豆長岡スポーツワールドなどの巨大廃墟群)を拝めているわけで、廃墟マニアは彼らには決して足を向けて寝られないはずである。
【廃墟Data】
探訪日:2015年5月下旬
状態:積雪により倒壊しつつある
所在地:
- (住所)北海道赤平市幌岡町170
- (物件の場所の緯度経度)43°34'56.1"N 142°02'11.4"E
- (アクセス)道央自動車道「滝川IC」を降り、高速出口の「東滝川交差点」を左折して国道38号線(芦別国道)を東(赤平方面)へ進む。そのまま7km道なりに進むと、右手のはす向かいにENEOSが見える地点で道道224号線(赤平市街)との分岐を示す青看板があるT字路が見えてくるので、そこを左折して細い路地へと入る。200mほど直進すると「プリンス平安」の看板を掲げた櫓を潜り抜ける形となるが、道はそこで行き止まりであり、筆者のようにバイクならともかく車を置くスペースはここには無く切り返しすら困難なので、乗用車で行く場合は付近の別の場所に車を停めてからここへ来ることになるだろう。