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【プリンス平安】その3:式場~客室

【プリンス平安】シャンデリアの美しい式場
グランドピアノのある式場

式場にはグランドピアノが残されていた。
廃墟となった今、奏でられるは静寂に耳が痛くなる程の無音の旋律――

式場の床に降り積もる断熱材

なお、この式場には壁や天井から剥がれ落ちた断熱材が床に層になって降り積もっている。これがアスベスト含有のものかどうかは素人には一見しただけでは分からないが、この式場に足を踏み入れるのであればそれなりに覚悟しておいた方がいいだろう※1

かつて愛知の超有名廃墟「ナゴヤトーヨーボール」で大量のアスベストの使用が発覚し、それまでに足を運んだ数多の探訪者が一斉にお通夜状態になったのは長く廃墟をやっている者ならば誰もが耳にした事のある話だ。

客室 その1

客室。屋根が抜けて畳に植物が生え始めている。

客室 その2

こちらも浸水がひどい。水は一気に建物を痛めるので、この廃墟ももはやそう長くは持たないだろう。

配電盤

配電盤。建物には元々の「旧館」と新たに増築した「新館」があることが分かる。

2階広間(赤平徳川城)

2階のやや広い部屋。窓の外に見えている城は「赤平徳川城」というB級スポットであり、そこもプリンス平安と同じく廃墟となっている。

もう少し補足すると、この城は「松澤よろい店」という東京の人形会社がバブル末期の1991年に建てたもので、天守には節句人形などを展示していた。そして2007年には廃城となり、会社自体も2011年に倒産。まさに「兵どもが夢の跡」を地で行く廃墟であるが、こんな無駄極まりないものをぶち建てていればそれも当然の結果と言えよう。

イーゼルのある客室

天井に届きそうなほどの巨大なイーゼル、どう見ても単なる趣味のサイズではない。住み込みの画家でも居たのだろうか。

(→「【プリンス平安】その4:従業員宿舎」に続く)

【脚注】

※1^

あまり常識的な事に脚注をつけるのもよろしくないのだが、近年はSNSの発達等により廃墟人口が「多様化」したため、中にはアスベストの危険性について全く知らない者もいると見受けられるので、その危険性の高さを鑑みてここであえて触れておく。


アスベストとは鉱物性の繊維状物質のことで、耐熱・断熱効果に優れている上に安価なため古くは建材として広く使われた。その後、その高い発がん性が明らかとなり世界中で製造・使用が禁止されていく。日本では1975年9月に吹き付けのアスベストについては使用が禁止されたが、それ以外のものはその後も使われ続けた。ようやく原則的に全面使用禁止となったのは世紀を跨ぎ2006年になってからである。


つまり今から10年以上前の建物でなければまず安全といえるのだが、我々廃墟愛好者が向かう先はそんなに新しい建物である事のほうが珍しいので常にアスベストへの暴露リスクがあると考えたほうが良い。「解体時のように建材が粉砕されない限り安全」ともされるが、同様に我々が向かう先は以下略である。特に1975年以前に建てられた物件に関しては非常に危険である。


「建材が粉砕されなければ安全」とされるように、アスベストの発がん性はその高い飛散性に由来する。繊維の直径がコンマ数ミクロンと非常に小さいため空気中を長時間漂うほか、容易に肺の深部にまで到達し、その物理的刺激と免疫応答により慢性的な炎症を引き起こす。アスベストは免疫による排除が難しく肺胞に長期間留まり、数十年の潜伏期間を経て悪性の肺疾患を発病する(肺がんや悪性中皮種など)。これは免疫細胞が出す活性酸素にDNAが長期間に渡り晒されるのが主な要因と考えられている。一般に予後は不良である。


なお、アスベストに対してその辺の薬局に売っているようなマスクを装着する行為は全くの無意味なので注意されたい。使うなら専門店で売られているようなHEPAフィルター使用の防塵マスクであり、それもきちんと装着できていなければ効果は発揮しない。また、オーストラリアなどではアスベスト鉱山が丸ごと廃墟になっているが、そこへ向かうのはたとえそのような装備があったとしても自殺行為だと言わねばなるまい。