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【湯谷温泉】人知れず消えた温泉郷(グランドホテルニュー湯谷)

【湯谷温泉】グランドホテルニュー湯谷_概観

下関のはずれ、山間部の県道沿いにある温泉郷の廃墟。ここには上に写っている「ニュー湯谷」の他にもう一軒「湯谷荘」という旅館もあったのだが、現在はこちらも廃墟になってしまっている※1。当地に残っていた温泉宿はこの2件だけであるため、2009年のニュー湯谷の閉鎖をもって湯谷温泉そのものが地図上から姿を消したことになる。

歓迎 天然ラジウム 湯谷温泉

県道沿いに見える看板。
「ラジウム温泉」とあるように湯谷温泉の泉質は「単純弱放射能冷鉱泉」であり、一般的な放射能泉の例に漏れず色も臭いも無かったようだ。

筆者はバイク乗りなので、これまた例に漏れず温泉好きである。これまで全国をバイクで旅しながら、有名処からマニアックな野湯まで大小様々な温泉に入ってきた。

しかし私の好みは色も臭いもキツい「いかにも」な温泉なので、ラジウム温泉には実は一度も入ったことが無い。そもそも空気中のラドンが肺がんのリスク要因であるという研究結果が出ている※2一方で、ラジウム・ラドン温泉が体に良いとする医学的根拠は全く無いので、あまり好き好んで入りたいとは思わない。

ホテルへ続く橋の前に掲げられた高札風の看板

ホテルへと続く石橋の手前には、まるで江戸時代のような高札風の看板が。

温泉水(みず)

み ず
『温泉水』

このセンス半端ないな。他にも「容れ器(いれもの)」「無料(ただ)」「準備(そなえ)」など独特の厨二変換が目立つ。

全体的にやたら強気な上、所々に商売っ気が見え隠れするのも面白い。「この温泉水(みず)を汲み取らんと欲する者は、かならずや腹が空くものなり。ホテルの健康カロリー会席料理を食すれば即ち健康の増進はさらに期待されるべし」には思わず笑ってしまった。

グランドホテルニュー湯谷 エントランス前

さて、それではホテルの建物の方を見ていこう。

グランドホテルニュー湯谷 エントランス

エントランス付近は荒れた様子も無くすっきりとしている。刺青お断りの看板や傘などがそのまま置かれている当時のままの姿は、今にも営業を再開しそうだ。

2階 エレベーター前

2階エレベータ前。

2階 藤の間

2階宴会場「藤の間」。建物の中はとても綺麗な状態だ。

渡り廊下

建物の最上階からは空中へ通路が伸びていた。まず間違いなくこの先が大浴場だ。

業務用冷蔵庫

裏手の業務用冷蔵庫。

ケースの中の空ビール瓶

大量に残されたビール瓶。まるで当時の宴会場の喧騒が聞こえてくるかのようだ。

永年のご愛顧ありがとうございました

窓ガラスには支配人からのメッセージが残されていた。

山口地方裁判所がこのホテルの破産手続きの開始を決定したのはこれより1ヶ月前のことである。しかし8月に予約客が多かったのか、その時点で事業を停止する事が好ましくないと判断されたようで、8月26日までは営業を継続していたのだと思われる。

朽ち果てた傘

今温泉街はどこも厳しい。この湯谷温泉のように、温泉街ごと無くなってしまうというケースも今後増えていくことだろう。

ホテルへと続く橋
うにパイベンチ

架かる橋のほとりには、亡き「湯谷温泉」の名を冠するバス停のベンチがぽつりと佇んでいた。時代の全てから取り残されてしまったようなその姿は、何とも言えない深い哀愁を漂わせていた。

【廃墟Data】

探訪日:2014年3月下旬

状態:管理物件

所在地:

  • (住所)山口県下関市吉田町湯谷195-1(下関市大字吉田字湯谷196-1 ?)
  • (物件の場所の緯度経度)34°06'28.8"N 131°05'54.4"E
  • (アクセス)中国自動車道「美祢西」ICを降り、料金所を出て分岐を左方向へ、県道33号線を下関方面へ進んでいく。道なりに約5km行った先の左手に「歓迎 天然ラジウム 湯谷温泉」の看板が見えてくる。その看板のある敷地に「グランドホテルニュー湯谷」が建っている。
     なお、本物件をGoogleMapで検索して出てくる場所は、マップに住所が登録されているにもかかわらず全く違う場所なので注意(記事執筆時点で下関市役所の場所になっている)。