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深静峡 -解体後-

深静峡 -解体後-

山奥の厳しい渓谷に、その廃墟はあった。
雪の積もる細い山道をバイクで乗り越えようやくここまで来たが、そうして目に飛び込んてきたものは、何者かにより放火され、解体・撤去されてしまった"亡き"廃墟の姿だった――

半ば呆然としながら、在りし日の痕跡を確かめるように一歩一歩瓦礫の上を歩いて行く。
永遠に続くかのような、灰色の世界。もう春だというのに、生き物の声ひとつ無い。
隔絶されたこの世界にいるのは、もはや自分一人だけなのではないだろうか?

……ふと目線を上げる。

そこにあるものは、山間をただただ吹き抜けていく、冷たい、風の音だけだった。

2007.4.21 山梨県山中にて