鼻をつく腐卵臭。 利用されるだけされて、用済みとなり、棄てられた土地。 今はただ、白濁した鉱水を湛える池だけが、妖しく滑らかに輝いている。...
(→「マウントパラダイス小倉原山 その2:平成茶屋内部」より) 店を出てしばらく歩くと、お地蔵様が大量に並んでいる場所に出た。遠くには菩薩像も見え、異様とも言える独特の雰囲気が辺りには漂っている。 うぅ、この雰囲気は……今までの体験で一番近いのは、夕暮れ時に恐山にバイクで突入した時だ…… 案内地図の写真で見た印象よりも恐ろしく小さいが、これが「三重の塔」だろう。根元から崩壊し...
(→「マウントパラダイス小倉原山 その1」より) カウンター。メニューを貼っていたと思われる上の板がまっさらなのが物悲しい。 店内には川ができてしまっていた。もはや外部と内部の境目もよく分からない。 囲炉裏には巨大な岩が。この建物を襲ったであろう土砂崩れの凄まじさを物語っている。建物が曲がりなりにも無事に立っているのが不思議なくらいだ。 今はもう色褪せてしまった...
太陽が山の稜線から顔を出し、山間の小さな村に夜明けが訪れる。ウグイスの鳴き声が凛とした空気に良く通り、辺りは肌寒いながらも実に爽やかな朝を迎えていた。 そんな私を出迎えてくれたのは、朝日を浴びて燦然(さんぜん)と輝く菩薩像だった。 ここは「マウントパラダイス小倉原山」。仏教系のテーマパークの廃墟のようだが、詳細は一切不明だ。 “マウントパラダイス”から辿れる情報は、その後に続く...
(→「その6:風呂」より) まだ巡っていない残る施設は「ブルースター」と「スキー乾燥室」の2つのみ。 まずは「スキー乾燥室」へ。 部屋には当時のスキー用品一式が残されていた。 「スキー乾燥室」なので当然といえば当然なのだが、設備がスキーのものばかりでスノーボードのものが全く見当たらないのが印象的だ。 こうしたスノースポーツのメイン層である若者は、いまや圧倒的に...
(→「その5:食堂」より) 男湯。夢も希望もない。早く女湯に行こう。 とか思ってたら、女湯はもっと夢も希望もなかった。この極狭の風呂…… この風呂場の露骨な男尊女卑は、古いホテルには非常によく見られる構造。ネット上にはここの女湯を酷評する口コミもあり、経営不振の一端はこういう所にもあると思われる。 いちいちそこかしこにバブルを連想させるものが鎮座している。 また...
(→「その4:プール」より) 2階の地図で「ダイニング」とされる場所。椅子を机の上に片した状態がきれいにそのまま残されていた。 地図での「厨房」。 厨房には使われていない大量の食器類が、そのまま放置されていた。 廃墟となり15年もの歳月が経つにも関わらず、ここだけがまるで営業前日のようだ。 (→「その6:風呂」へ続く)...
(→「その3:客室」より) ついに来てしまった……バブルの落とし子、屋上温水プール。一流のリゾート地ならともかく、こんな糞ド田舎なのでもっとチャチいものを想像していたのだが、そこはバブル。 天井は全面ガラス張りで開放感があり、プールそのものも十分な広さがある。そして室内暖房用のスチームや、夜間照明なども完備。金かかっとるぞー、コレ! 現役時はもちろん、廃墟になっても間違いなくこのホテル一番...
(→「その2:フロント」より) 館内地図を見つけた。左下1階の「ブルースター」というのはバーのことだろう、特に珍しくはない。だが右上端に見える最上階の「温水プール」というのが非常に気になる。 はやる気持ちをおさえて、まずは客室へ。 Oh…… と思いきや、そのすぐ隣の部屋はこんなだったりする。いったい何なんだ、この天国と地獄のような差は…… この部屋など現役時...
(→「その1:時間さえ凍り付く高原の廃墟」より) 天を埋め尽くす蝶々。 人間たちに張り付けにされた、造り物の身体。 その翅が風を孕むことは決して無いはずだった。 ──だが彼らはその生涯でただ一度だけ本物の空を舞い、そして地に墜ちて、死んだ。 ロビーの奥に、館内の案内図にも記載が無い隠し部屋を見つけた。 恐らく古いバーの跡で、併設の建物に新しいバーができた後に倉庫などへ転用...