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【空撮】新日鉄 浸透実験池「木更津フィッシュアイ」

木更津フィッシュアイ(新日鉄浸透実験池)の空撮写真

(▲ 新日鉄 浸透実験池全景 - 民間航空機内より撮影)

本当にまんまる。

それにしても不思議な地形だ。全体が魚の頭のようで、この丸い池が「木更津フィッシュアイ(魚の眼)」と呼ばれているのも納得がいく。

浸透実験池 コンクリートの遺構

関連施設で唯一現地に残る、鉄筋コンクリート製の遺構。これは揚水ポンプ場の跡で、実験池に水を送り込む役割を担っていた。

この実験は「工業用水を干潟に貯めておけるか」を検証するためのものだった。当時、日本は高度経済成長の真っ只中。千葉県内にも工場が次々と建てられ、そこで使われる水の需要が急増した。しかし川などの水源は、すでに農業用の需要でいっぱいだった。

そこで、冬などの農閑期にどこかへ水を貯めておけないか? と考案されたのがこの丸い実験池だった。「浸透」実験の名が示すとおり、いかにして海水の浸透を防ぐかを研究するのが、この実験の主な目的であった。塩分を含んだ水は工業用水として適さないためだ。

特徴的なあの二重の円の形も、海水の浸入を防ぐための工夫だった(外側の円がバリアの役目を果たすことが期待された)。

浸透実験池_未来の遺跡に想いを馳せて

しかし、実験は思わぬ形で終焉を迎えることになる。1970年代に発生したオイルショックにより高度経済成長期が終わり、工業用水の需要も急減。その頃には流域にダムもいくつか完成しており、もはやこの場所に巨大な人工湖を造成してまで淡水を確保する理由そのものがなくなってしまったのだ。

ぬかるむ干潟に多大な労力をかけて建設した浸透実験池とその関連施設も、わずか数年で用済みとなり放棄されてしまった。

浸透実験池 関連施設屋上からの眺め

揚水ポンプ場の跡には丈夫なハシゴが備え付けてあり、今でも登ることができる。

さっそく登ってみると、ここに着くまでにたどってきた道が、埋め尽くされた緑の中の細い一条の線に過ぎない事を知った。

遠くには君津の工業地帯だろうか、欠けたノコギリの様なシルエットが夏の熱せられた大気の中にゆらめいている。

しかし肝心の「魚の眼」──丸い浸透実験池をここから確認することは、残念ながら叶わなかった。

浸透実験池 湿地帯に佇む墓標

廃棄された浸透実験池の墓標のように、朽ちかけた木製の電柱が湿地帯に一本突き刺さっていた。

遠くに見える羽田へと帰る飛行機との盛衰のコントラストが、より物悲しさを漂わせている。

【廃墟Data】

状態:健在

所在地:

  • (住所)千葉県木更津市畔戸
  • (物件の場所の緯度経度)35°24'54.2"N 139°53'56.7"E
  • (アクセス・行き方)東京湾アクアライン「木更津金田」ICより、国道409号線経由で約10分(4.5km)