宮崎の山深い森の中に眠る廃墟「ダルマの里」。本記事では今後5回に渡って、小説形式でこの廃墟を紹介していきます。
奇っ怪きわまる禁断の領域に迷い込んでしまったブログ管理人の運命や、いかに!?
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連続廃墟小説
第一話 「狐顔の少女」

「おかしい……こんな道通ってないぞ……」
九州は宮崎県にある某廃墟を撮影した帰り道、私は山で道に迷ってしまった。スマートフォンの電波どころかGPSすら拾えず、紙の地図を頼りに移動していたら元来た道すら分からなくなってしまった。
これ以上のバイク移動は山深く危険なため、いったんバイクを降り、徒歩で周囲の様子を確認することにした。
「ちょっとここで待ってろ、Mk2」
どこか高台のような所で電波でも拾えれば……

ところがしばらくして、高台どころかバイクの位置すら見失ってしまった。
……ありえん! そもそもナビを使ってて迷うこと自体がおかしいのに、いったい何なんだ今日は?
人里離れた見知らぬ山で完全に迷子になっていると、ヤブの中に鎮座する異様な赤い物体を見つけてしまった。

何だこれは……ダル……マ? 人が入れる大きさだぞ……
何でこんなもんが、こんな人里離れた山の中に……おかしいだろ……
突然の事にあっけに取られていると、不意に後ろから人の声がした。
「おや、お前さんニンゲンかい?」

驚いて振り返ると、そこには狐とも人ともつかない奇妙な生き物が立っていた。ああ……疲れてるんだな、俺……
「ははっ、本物じゃん! 久しぶりだねぇ……」
キツネ顔の少女は悪戯っぽい笑みを浮かべ、まじまじと私を見る。
「ここは『ダルマの里』。ニンゲンじゃ3日と生きられないよ」
あ? ダルマ? ダルマってさっきの……あの、ダルマか?
「まっ、これも何かの縁だ。ここでの生き方は、このオレ様が手ほどきしてやるよ」
は? ……え?
「ついてきな」
そう言うと、少女はスタスタと山の奥の方へと歩き出した。
◇
続く......第二話「名前」