(→ 坪野鉱泉:その2「ある種のタイムカプセル」より)

しかしそれ以上に私をがっくりさせたのはその水質だった。
この岩盤に磨き抜かれて透き通った水! すっきりと五臓六腑に染み渡るさわやかな喉ごし! これ完全に六甲のおいしい水だわ……ってあれ? 温泉じゃないの???※1。
加賀のしょっぱい水やら別府の茶色い水やらを飲み歩いてきた私にとってこれは相当ショックだった。「鉱泉」というからには何らかの治癒成分(胃腸に効くらしい)が含まれていると思いたいが、正直そこらのコンビニで売ってる水と区別がつかない……釈然としない……
もっともこうして現地調査をしている間にも地元の方が2名ほど水を汲みにいらしていたので、水質の良さは確かなようだ。北山薬師堂の上流部にあたるので「薬師の水」として愛されているとのこと。

というかそこが共同浴場跡であってくれなければ、客は各部屋に設置されているこの異様に狭い謎の空間で温泉に浸かっていたことになる。これ広さ的に洗濯機置くスペースだよね? 本当にここに人が入るの? あり得ないよね? 懲罰房かな?

懲罰房 お風呂からの眺め。田んぼばかりで他に目を引くものは何も無い。
市街地からのアクセスも悪く周りは田んぼだらけ、目立った観光スポットも無い。建物自体の設計も古く、立ったままでしか入れない風呂に、頭が着きそうな(というか着く)くらい低い中二階の天井。これでホテルが潰れないという方がどうかしている。
現在の資産価値は全くのゼロで、むしろ毎年かかる固定資産税の分とんでもないマイナスと言える。しかし解体するにもその費用だけで数千万円以上かかると思われ※2、かといって所有権を放棄することもできず※3、結果としてそのまま建物を放置せざるを得ない、というのが現状のようだ。
坪野鉱泉はこれからも北陸最恐の心霊スポットとして、この地に君臨し続けることだろう。