「健全ナル国民ノ診療所」などとも言われる廃墟。
どうしてもあの「投薬口」がこの目で見たくて、数少ない遠出できるチャンスであるゴールデンウィークを利用して行ってきた。

調剤室の薬棚にすごい薬品を発見。息を殺しながらだが、思わず叫んだ。何でこんな所に!
……しかしよく見たら、「電気液用」の文字。
だがそれにしても、こんな超絶毒物を患者に出す薬と同じ棚に保管するなどとは今の常識ではとても考えられない。
やはり二重の意味ですごいものを見てしまった。

これも凄い。視界を横切った瞬間、二度見した。サリチル酸はいいが、それの水銀化合物???
まさかこれも消炎鎮痛剤として処方してたとか? まさか……? 用途不明すぎる。
まぁ、中身はしっかり丸薬の形してたから、そのまんま患者に出してたんだろうけど……
(追記:1880年代に使われ始めた梅毒の治療薬らしい。それまでの薬に比べれば比較的安全だったものの下手に使うとやっぱり死者が出て、今ではまったく使われなくなった)

なんとなしに目に入ったこの雑誌も尋常じゃない。
内容を要約すると「この戦争には絶対に勝たなくてはならない。命を捧げる者がいる中、風呂釜くらい何だ」。鉄製品の回収員もそこまでは……と止めるなか、生活必需品までをも日本軍に供出しようとしたアツいお百姓さんのお話。
要するに、いよいよ戦争がテンパッてきた頃の遺産である。この建物の生きてきた時代をまざまざと感じさせる。
この廃墟は最近崩壊が進んでいる。私自身はこれが初めての訪問なので実感はできないのだが、「当初は無事だった2階部分が崩落し、不心得者による備品の盗難も目に余るほどだ」という話だ。
この素晴らしい廃墟も、あとどの位こうして残っていられるだろうか。