(→「指宿ソーイング その1」より)
もうひとつの大きな区画も同様にがらんとしている。
出来上がった製品を運んでいたと思われるカート。
ここに製品を積んでいたのだろう。
極めて自然に腐食したメモ書き。まるで漫画に出てくる宝の地図のようだ(笑)。書かれている内容も宝の地図よろしく暗号めいていて不明。一体何の数字なんだ……?
「エルボー」とあるので初めは縫製品用の部品棚かと思ったが、恐らくそうではなく配管用の部品のもの。
建物の内部にまで植物が侵食してきている。こうなるともう建物自体の寿命も近い。
そろそろ建物内の撮影が厳しくなってきたため表に出ると、屋根に"Rawlings"と"ASICS"のロゴがペイントされているのが見えた。これらはユニフォームやグローブなど野球用品を扱うメーカーである。ASICS(日本メーカー)はRawlings(米国メーカー)とライセンス契約を交わして、日本でのRawlingsブランドの展開を担っていた。
ここはその生産拠点の1つだった可能性が高いが、ライセンス契約は2012年一杯で終了している※1。そしてロゴが消されずに残っている以上、ここはそれ以前に廃墟化した物件と見ていいだろう※2。遺留品の少ない廃墟だったが、ここに来て素性が少しずつ分かってきた。
2階は従業員の休憩スペース(和室)になっていたほか、敷地内には他にも従業員寮と思しき2階建てのアパートなどが見えたものの、そろそろタイムアップだ。夕闇が迫り来る中、私はバイクに跨りこの場を後にした。
(指宿ソーイング その1~2 了)