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野迫川村立池津川小学校 ~廃校の桜~

池津川小学校 裏庭に咲く白い桜

1. 概要

高野山「奥之院」のさらに山奥に位置する秘境、奥高野。ここに野迫川のせがわという村がある。この村のさらに外れ、池津川と呼ばれる地区は世帯数16世帯、総人口数はわずか25人※1という人口減少が特に激しい僻地である。ここに、古い木造の小学校が建っている。

ここであえて「廃校」と言わなかったのは、あくまでもまだ休校扱いだからだ。休校年は昭和54年(1979)。休校間際の昭和51年度(1976)の時点で、生徒数は全学年合わせてたったの7人であった。事実上の廃校と言ってよく、再開の見込みはまったくない。

冒頭の写真は池津川小学校の裏庭に今も咲く桜。左の建物が校舎で、右が炊事小屋(給食室)である。この日は天気がめまぐるしく急変し、それまではポカポカと陽が射して穏やかな陽気だったのがその5分後には大粒の雪となるなど、奥高野という土地の自然の厳しさが肌で感じられた。

2. 探訪

池津川小学校 新校舎 正面。梅を思わせる可憐な白い桜が咲いている。

(▲ 校舎正面より。写真中央が昇降口)

記事冒頭の桜もそうだったが、この校舎周辺の桜は全体的に白っぽい。つける花の量も、まだ満開ではないにしても控えめで、その姿は桜というよりも梅を思わせる。枝からこぼれんばかりの鮮やかな花を一斉に咲かせるソメイヨシノとは対照的だ。

名は分からないが、恐らくこれが奥高野に咲く自然のサクラなのだろう。華やかなソメイヨシノも悪くはないが、こういう可憐で落ち着いた雰囲気の桜もなかなか趣があって良いものだ。

校舎のガラスには川沿いの桜が写り込んでいる。

川沿いの桜が校舎の窓に映り込む。この桜も、先程までの桜とはまた雰囲気が違う。

池津川小学校 廊下

(▲ 校舎内の様子)

池津川小学校 時間割表

時間割は脅威の7時間授業。土曜日も当然のように授業があるなど、時代を感じさせる。

林美人くんの「目標」。先生におこられんこと。わすれものをしないこと。せいが高なること。すききらいがなくなること。しゅく題をよくすること。たたされんこと。字がきたなくならんこと。目がわるならんこと。

林義人くん、しょっちゅう先生に怒られては廊下に立たされてたんだろうな(笑)

「せいが高なること」「目がわるならんこと」など関西圏特有の方言が丸出しなのも何とも言えない味がある。

林義人くんの自画像。昭和43年5月26日生まれ。

これが噂の林義人くん。なかなかヤンチャそうな面構えしてるじゃないか!

ゆうじくんとえりこちゃんの相合傘

校舎の隅に隠れるようにして残されていた、在りし日の想い出。

教室の中から裏庭の白い桜が見える。辺りには雪が降り始めている。

教室からは裏庭の白い桜が見える。辺りにはにわかに雪が降り始めていた。

資料室に残されていた藁靴

教室の一角には小さな藁靴が置いてあった。あくまで昔使われていた、という資料として置いてあるものだろうが、かつて現地の子供たちがこれを履いていた可愛らしい姿を想像するだけで口元が緩む。

池津川小学校 旧校舎。入口の前には軽トラが停まっており、中では人が何か忙しく作業をしている。

旧校舎も近くに現存している。昭和38年(1963)10月まではこの建物が池津川小の校舎であった。こちらも見学したかったが、この日は中で人が忙しく作業をしておりそれは叶わなかった。

池津川小学校旧校舎裏手の桜。辺りには一面の薄原が広がり、雪が舞い降りている。

旧校舎の裏手。桜花の咲くすすき原へ静かに雪が舞い降りる。

池津川小学校旧校舎裏手の桜(アップ)。頭を垂れた満開の桜の枝と、ススキと、白雪のコラボレーション。

──春と秋と冬が、いっぺんに来てしまった。

【廃墟Data】

探訪日:2018年4月上旬

状態:健在

所在地:

  • (住所)奈良県吉野郡野迫川村大字池津川347
  • (物件の場所の緯度経度)34°10'33.9"N 135°40'03.8"E
  • (アクセス・行き方)高野山奥之院、中の橋駐車場より、国道371号線(高野龍神スカイライン)を「龍神」方面へと進む。8.6km先で県道734号線と接続する「野迫川口」交差点へと差し掛かるので左折して県道に入る(交差点には「歓迎 野迫川村」などの分かりやすい案内がある)。2.5km先、突き当たりのT字路を左折して県道733号線を「立里荒神社」方面へと進む。500m先で再度県道734号へと接続するので、右折して「宇井」「池津川・辻堂」方面へと進む。そのまま4.4kmほど進むと池津川の集落に到着する。
    なお、県道734号線を逆側(東側)から辿って池津川へと来るのは道が狭く急峻なためお勧めできない。どうしても西の高野山側からではなく東側から来るのであれば、北の県道53号線を使って迂回してくるのが良いだろう。