1. 概要
スカイレストニュー室戸とは、高知県の室戸(むろと)岬にそびえ立つ展望レストランの廃墟である。ここは四国の東側の最南端にあたり、岬からは太平洋が一望できる。この素晴らしい展望を生かして結婚式場としても使われていたようであるが、昭和47年(1972)のオープンからわずか6年で閉鎖してしまった。
一度見たら決して忘れられないその奇抜な外観から、2000年代の廃墟ブーム以降はマニアであれば知らぬ者は無いとまで言われた廃墟である。しかしその割には実際に足を運んでみたという話はあまり聞かない。
それもそのはず、行こうとなると電車も空港も高速道路も無く、ただひたすらに時間と労力ばかりがかかる……そのあげく他にめぼしい観光スポットも無いという、スピード廃業も納得の残念な立地なのだ。こんな所で結婚式など挙げようものなら、参列者からはそれは非難轟々だったに違いない※1。
このようなアクセスの悪さからか、ここから目と鼻の先にある国民宿舎も廃墟になってしまっている。さらに、むろとスカイライン沿いにはコンクリート工場の廃墟があるのも発見した。探せばまだありそうだが、今回は廃墟の捜索を目的にここへ来ているわけではないため、室戸岬にあるのをこの目で確認した廃墟はニュー室戸を含めて以上3つとなる。
2. 実際に足を運んでみた

私が廃墟に惹かれはじめた当初、とあるサイトでこの外観を目にした時の衝撃は今でも忘れられない。これは絶対にいつか行きたいと思ったものだ。
あれから長い時が経ち、当時あった廃墟写真サイトはそのほとんどが消滅してしまったが、この廃墟の記憶が私の中から消えることはなく、ずっと心のどこかで気になっていた。

この廃墟の奇抜な外観──三角形に配置された3本の巨大な円柱は、ただの飾りではなくこのように内部が螺旋階段になっている実用品だ。
早く登ってみたい衝動に駆られるが、はやる気持ちを抑えてまずは今居る階の部屋を見て回ることにした。

ここは2階の「遊技室」と思われる。この建物は斜面に建てられていて、正面入口から入るとそこが2階という構造になっている。
部屋の造りはどう見ても旅館の「大広間(和室)」と同じものだ。厨房も同じ2階にあることからオープン当初は遊戯室としてではなく、食事を提供する場として使われていたのではないかと思う。しかしながら現状はご覧のありさまで、営業当時の様子を正確にうかがい知るのは難しい。
その「遊戯室」も上から塗りつぶして案内を見えなくしようとした痕跡があることから(ひとつ前の写真を参照)、運営末期の迷走っぷりが感じられる。

3階にある3つの区画のうちのひとつ。ご覧のように大海原を一望でき、展望レストラン・結婚式場として使われていたはずの場所だ。建屋は強い海風に根こそぎ吹き飛ばされてしまい、床が一面の水溜りとなってしまっている。

海沿いの廃墟は痛みが早い。海風により柱は吹き飛び、窓ガラスは割れ、鉄製品はことごとく錆びてしまう。この廃墟もあとどのくらいこうして立っていられるだろうか。
強く後ろ髪を引かれる思いではあるが、もう別れの刻だ──

ところ変わって、室戸岬山頂の猫たち。
岬の展望台へと続く駐車場はちょっとした野外猫カフェ状態になっている。ベンチで休んでいると猫の方からわらわらと寄ってくるなど、猫好きにはたまらない隠れスポットだ。
どうも定期的に餌付けされているらしく、車から降りてきたカップルや家族連れが勘違いした猫たちにタカられている光景がよく見られる。去勢はきちんとなされるなど十分配慮はされている様子で、周囲には迷惑をかけうる民家も無いので、猫たちは自由にのびのびと過ごしているようである。
この廃墟の空撮動画はこちら↓
(※ 後半(06:20~)におまけとして山頂の猫たちの様子を収録)
室戸岬は海岸段丘の典型例であり、上空から見るとその美しい自然の造形に圧倒される。
【廃墟Data】
探訪日:2019年5月上旬
状態:健在
難易度:★☆☆☆☆(最低) ※ただし現地に行くまでが大変(詳しくは下記)
駐車場:すぐ近くに室戸スカイラインの高岡園地駐車場(無料)がある(→地図)
所在地:
- (住所)高知県室戸市室戸岬町
- (物件の場所の緯度経度)33°15'51.5"N 134°10'44.7"E
- (アクセス・行き方)徳島自動車道の徳島ICを降りると国道11号の南方向の車線に接続するので、それをとにかくただひたすら南下する(直進していると名称はすぐに国道55号線へと変わる)。そのまま130kmほど進むと室戸岬へと到着するので、岬を折り返して土佐湾側へと入ったらすぐ400mほどで、右方向にむろとスカイラインへと入る入口が見えるので右折して入る。スカイラインのつづら折りの坂道を登っていくと、5分ほどで室戸岬山頂の駐車場へ到着する。そこから徒歩で来た道を引き返すとすぐにあの特徴的な外観の廃墟が見えてくる。高知県側から向かう場合も、高速道路を降りてから国道55号をひたすら南下する点は同じである。