1. 概要
室戸生コンクリート企業組合とは、四国の東南端に位置する室戸岬にあるコンクリート会社※1の廃墟である。「企業組合」とは聞き慣れない名前だが、要するに中小企業の一種だと考えてよい。世の中の企業がほぼ株式会社と有限会社で占められる中、この形態を取る企業の割合は零コンマ数%の世界であり極めて稀である。
事務所に掲げられていた品質管理の合格証の有効期間は平成17年(2005)3月31日までであったが、強度試験の報告書はその日付以降のものも残されていた。また、廃墟内のカレンダーはどれも平成18年(2006)のものだった。以上のことから、操業停止年は平成18年(2006)と考えるのが自然だろう。
2. 内部探索

コンクリート製造用の骨材(砂利)置き場。写真では見えにくいが向かって左側にここへ通じる坂道があり、そこを通じて砂利を運んでいたようだ。
ほぼ消えかかってしまっているが、置き場に掲示されたパネルには一文字ずつ「室戸生コン(企)」と書かれているのがかろうじて見える。

休憩所から出て正面には大きな建屋が見える。中央の長方形の建物が生コンクリートの製造プラント。右の黄色いタンクは原料のセメントを貯蔵するサイロである。
プラントに斜めに突き刺さっている太い金属製の筒はベルトコンベアであり、骨材置き場まで続いている。この中を通って砂利が置き場からプラント内まで運ばれてくる。
そしてセメントと砂利と水、先程の「ポゾリス」などがそこで混ぜ合わされることで生コンクリートが作られるのだ。
向かって左奥に事務所のプレハブがあるので、まずはそこから見ていく。

試験室の奥には試験用のコンクリートコア(供試体)が大量に転がっている。打設したコンクリートが所定の強度を満たしているかを測定するため、一部がこのような形で切り取られたり、打設の際に専用の容器に詰められてこのような形に成型されたりする。

事務所にそのサンプル作製の様子を収めたフィルムが残されていたので、そこから画像を復元してみた。向かって左手に置かれている筒状の容器がサンプル作製のための型枠である。
掲げられているボードには工事名や日付・場所等が書かれているはずで、これが業務上の重要な記録となる。
残念ながらこの写真からは文字までは読み取れないが、これは廃墟のためフィルムの保存状態が悪いことに加えて、まさかフィルムを持って帰るわけにもいかず現地での接写には限界があったからであり、本来はもっと鮮明なはずだ。

まさかのMr.マイツール。これはかつてリコーから出ていたマイツールという表計算ソフトを動かすための専用PCだ。表計算ソフトと言っても、Youtubeで使用例を見た感じエクセルの印象からは程遠い。むしろ「データーベース用のプログラミング言語」と言った方が近いだろう。

キー配置もかなり特殊である。マイツール専用と思われる特殊キーが散見されるほか、CapsLockとCtrlの位置が通常とは逆なのが面白い。今のCapsLockが超絶糞配置だというのはパソコンユーザー共通の認識と思うが、確かにここにはCtrlがあったほうが作業効率は上がる気がする。
この廃墟の空撮動画はこちら↓
【廃墟Data】
探訪日:2019年5月上旬
状態:健在
所在地:
- (住所)高知県室戸市室戸岬町6820-96
- (物件の場所の緯度経度)33°17'13.4"N 134°10'04.4"E
- (アクセス・行き方)徳島自動車道の徳島ICより国道11号→国道55号線経由で約3時間(125km)。高知県側から向かう場合も国道55号経由で同様。