1. 概要
旧吹上トンネルとは、東京都青梅市にある心霊スポットである。日本に数多ある心霊トンネルの中でも、かつては関東で最恐クラスとされていた。テレビ局の心霊番組でも何度も取り上げられるなど、その知名度は犬鳴トンネル(福岡)や常紋トンネル(北海道)と並びまさに全国区だった。
ここでの心霊現象としては「白い服を着た女の幽霊が出る」というのが最もポピュラーだ。この女性の正体については様々な憶測が流れているが、有力な説としては昔近くにあった茶屋で強盗があった際に殺されたそこの孫娘だろうと言われている※1。
その茶屋は今も廃墟となって残っており、その近くにはこのトンネルよりもさらに古い時代の「旧々吹上トンネル(古吹上トンネル)」がある。一説にはこちらの方が霊が出やすいともされていたが、現在は入口が鉄板で完全に封鎖されており中に入ることはできない※2。

冷たい雨のしとつく夕刻。トンネルの入口には妖しげな霧が立ち込める。異様な静けさの中、「ピチョン、ピチョン」という水滴の音だけが辺りに反響している。そして全てを飲み込んでしまいそうなトンネルの暗闇に、ナトリウムランプの鈍いオレンジ色の光が点々と奥まで続いている────
当時私は心霊スポットにはあまり興味がなかったのだが、その認識を塗り替えたのがこの光景だった。同行していた友人2名も思わず声を上げる。体の芯から身震いするようなこの圧倒的存在感は写真に残す価値があると私は感じた。
しかしこの日はスマホしか持っていなかったので、後日ちゃんとしたカメラを持ってまた来ようと心の中で密かに誓った。その後なかなか再訪できずにいる内に、トンネル内の照明が雰囲気ぶち壊しの高輝度LEDランプに換えられたという探索報告が私の耳に入ってきた。
照明変更後はSNSのレポ等を見てみても「怖くない」という意見が多く、界隈での評判もすこぶる悪い。心霊シーズンの夏を迎えてこのトンネルへ足を運ぶつもりの方は、その事を念頭に置いておくとあまりガッカリせずに済むかもしれない。
一応、以下に再訪時の旧吹上トンネルの探索記録を載せておく。探索日は照明変更後の令和4年(2022)である。
2. 照明変更後の探索記録

で、肝心のトンネル内部がこれだ。ナトリウムランプ時代にあった恐ろしい不気味さはまったく無い。とはいえ、これはこれで悪くないと筆者は感じた。
それは私のようなカメラマン特有の感覚だろう。この写真のように退廃的な近未来SFっぽい画がシャッターを押すだけで簡単に撮れるので、撮影していて楽しいのだ。
これは近隣にある廃トンネルの畑トンネルでかつて行なわれた、AKB48のPV撮影※3に通じるものがある。
(▲ トンネル内の360度写真。この写真は自由にグリグリ動かせます)

一応、新道の方も紹介しておく。写真の新吹上トンネルが平成5年(1993)に開通したことで、旧吹上トンネルは自動車道としては使われなくなったのだ。
しかしこちらが古臭いナトリウムランプのままなのに、なぜほとんど利用者のいないあちらのトンネルが新型の照明に替えられたのか……コレガワカラナイ。

お堂のある旧道をずっと上っていくと、写真のトンネル入口にたどり着く。ルートとしては逆側からの方がはるかに楽だが、少しでも心霊的なものを求めるならば、こっちの道からの方が無粋な高輝度照明がトンネルの近くにない分良いかもしれない。
また、ここから5kmほど北東には、別の心霊トンネルである畑トンネルがある。こちらは旧吹上トンネルとは違って、もう使われていない廃道だ。トンネルの出入口は封鎖されているものの、清掃センター側(北側)からなら入ろうと思えば中に入ることができる。
かつては旧吹上トンネルの方が心霊スポットとしてずっと格上だったが、今となってはこの畑トンネルの方が心霊的にはオススメの物件といえるだろう。
【廃墟Data】
状態:白色の高輝度LED照明に換装済
難易度:★☆☆☆☆(最低)
駐車場:なし
所在地:
- (住所)東京都青梅市黒沢2丁目1081 付近
- (物件の場所の緯度経度)35°48'58.4"N 139°14'56.1"E
- (アクセス・行き方)圏央道「青梅」ICから都道194号経由で約20分(10km)。