1. 概要
キューピーの館は岡山県岡山市にある宗教施設(おそらく寺の関連施設)の廃墟。その名の通り無数の人形が吊り下げられた状態のまま朽ち果てており、見た目が恐ろしく不気味である。
人形には人名や日付が刻まれているものも多数あり、これが廃墟の怖さに拍車をかけている。一説には死んでしまった胎児や赤ん坊(水子)を供養したものではないかと言われるが、これにはやや疑問も残る(後述)。
その強烈なビジュアルから、岡山の心霊スポットでも毎回上位に挙げられるほどの物件である。そういった事からも、それこそ「人形がひとりでに動く」とか「子供の泣き声がどこからともなく聞こえる」とか言われていてもおかしくはないのだが、不思議とそういった類の心霊的な噂はあまり聞かれないようだ。
2. 実際に足を運んでみた

どうやらこの先の寺は最上稲荷(妙教寺)の三光天王が祀られていたようだ。
「鳥居があるし神社じゃないの?」と思われるかもしれないが、最上稲荷は仏教の流れを汲む神仏習合の寺である。だからこの寺には鳥居もあれば、奥にある拝殿も神道形式のはずなのだ。
もっとも参道があの状態では、この奥にまだ建物が残されているかどうかすら確かめようがないが……

(▲ 国土地理院「岡山市北区高松稲荷」付近の地図データを元にブログ筆者が作成)
2020年版の国土地理院の地図を見てみても、参道の先に一つ建物があることになっている。恐らくこれが寺の拝殿であろう。
これは道なりに約230m、高低差は80mの行程だが……ビル23階分に相当する高さまであの藪を掻き分けて進まなければならない(しかも道は崩れている)と考えると相当な体力が要求されそうだ。地図上には寺をかすめるようにして通る別のルートも見えるので、そちらを検討してみてもいいかもしれない。
ちなみに移転先とされる一乗寺(最上稲荷奥之院)は、ここから2km北西の龍王山の頂にあり今も現役である。

まずはこの人形そのものついてだが、水子供養といえば普通はお地蔵様であり、多くの場合依頼者には小さな地蔵菩薩像が手渡される。そこへ個人的に人形を供えることはあっても、こうして人形自体を祀るのはあまり一般的ではないのだ。
また、生年やその干支が書かれた人形は多く見つかる一方で、はっきり「没年」と書かれた人形が見当たらない点も気になる。
(※参考:宗教法人の資格を得ていなかった廃墟「平和観音寺」の水子供養でさえ、上記の条件はすべて満たしていた)

次に施設の由来に関してだが、キューピーの館は鳥居の目の前、しかも参道沿いに位置しているため、鳥居の奥の寺と全く無関係だったとは考えにくい。
そして寺の祭神の三光天王は乳病平癒の神様である。その延長で安産祈願が行われていたとしても決して不思議ではない。

以上のことからこれは水子供養というよりは、安産祈願やそのお礼参り、さらには子の健やかな成長を願ってのものと考えた方がよりしっくりくるように私は思うのだ。
(人形供養の線も考えたが、人形本体に生年月日や干支が書かれている点がかなり引っかかる。)
【廃墟Data】
状態:令和5年(2023)現在では、人形はすべて片付けられているとの情報あり
所在地:
- (住所)岡山県岡山市北区高松稲荷1044-67
- (物件の場所の緯度経度)34°42'06.3"N 133°50'29.8"E
- (アクセス・行き方)岡山自動車道「岡山総社」ICを降り、高速出口の十字路を左折して国道180号線を「岡山市街」方面へと入る。2.6kmほど進み吉備線「備中高松」駅を過ぎてすぐ「最上稲荷入口」交差点があるので、そこを左折して県道241号線に入る。そのまま2.5kmほど進むと最上稲荷併設の広大な駐車場(有料)が見えてくるので駐車にはそこを利用する。駐車場から東へと進み、住宅地を通り過ぎてため池の横の道を山の方へと進んでいくと、右手にすぐキューピーの館が見えてくる。
ここは岡山市北区にある三光山のふもと、大窪越の手前に位置している。東側から大窪越を越えて来ることもできるとは思うが、上記のように西の高松稲荷側から来るほうが遥かに簡単だろう。