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畑トンネル

1. 概要

畑トンネル(はたトンネル)とは、埼玉県飯能市の山中にある廃トンネルである。現在は前後の道路を含めて道全体が通行止めになり、廃道となっている。

ここは心霊スポットとして古くから地元では知られていた。そして近年になり心霊系のYouTuberたちがここを紹介するようになると、広く知られた人気スポットになっていった。

またその影響で訪れる人が一気に増えたためか、令和4年(2022)に入りトンネルの出入口が新たに鉄板で封鎖されてしまった。その状況についても本記事で詳しく解説する。

(※ 本記事はトンネル封鎖後に現地を再訪し、その最新の情報を踏まえて昔の記事を大幅に書き直したものです。)

1-1. 畑トンネルの歴史

畑トンネルの案内板

(▲ 畑トンネルの歴史を解説した現地の案内板)

畑トンネルの開通は明治43年(1910)のことである。当時は東京の青梅と埼玉の飯能をつなぐ重要な交通路であった。両地は山と川で隔てられており、トンネルができるまでは険しい峠を越えるか、下流の方まで回して川を渡らないと行き来ができなかった。そのため畑トンネルの開通は地域住民に大変喜ばれたという。

昭和62年(1987)に山を直進するバイパスができてからはその重要度は下がったものの、なお現役のトンネルであった。それが廃止の憂き目にあったのは、平成に入り産業廃棄物の不法投棄が目立ち始めた※1ためである。

バイパスの完成で交通量が減り、人目につきにくいことに目をつけられたのだろう。畑トンネルは平成8年(1996)に通行止めになる。その後の土砂崩れなども災いし、ついには道路そのものが完全に閉鎖されてしまった。

畑トンネルの内部は煉瓦巻となっている

(▲ 畑トンネルは埼玉県初のレンガ造りのトンネルだった)

こうして廃道となった畑トンネルであるが、先述の通りこのトンネルは地域の発展に多大な貢献をもたらした記念すべきトンネルである。埼玉県内では初となる煉瓦覆工ふっこうのトンネルということもあり、歴史的価値のある史跡として現在も取り壊されることなく残っている。

1-2. 畑トンネルとAKB48

畑トンネルで撮影されたAKB48「制服が邪魔をする」PVの一場面

(▲ 畑トンネル内で撮影されたアイドルのPV - AKB48「制服が邪魔をする」PV より引用。パブリシティ権保護のため一部をモザイク修正済)

ちなみにここは、平成19年(2007)発売のAKB48の2枚目のシングル「制服が邪魔をする」のPVが撮影されたことで、アイドルマニアの一部では有名である。

レンガで覆われたトンネル内が、照明の具合でまるでサイバー空間にいるかのような効果を演出しており、古いものをうまく使って全く新しい表現をした好例といって良いだろう。

この発想は正直上手いと思う。

1-3. 心霊スポットとしての畑トンネル

「人面犬」のイメージ画像

畑トンネルの心霊的な噂としては、主に「人面犬」「見ると死ぬ天井のシミ※2の2つが知られている。特に人面犬はここが発祥の地とも言われ、人面犬のうわさが全国的に広まった平成元年(1989)前後には、すでに畑トンネルは旧道となり心霊スポットだったので、時期的にも符合する。しかし人面犬の発祥自体に諸説あるため、この説も正しいかは分からない。

テレビの心霊番組などの影響で、心霊スポットとしては近隣にある旧吹上トンネルの方が長らく有名だった。そのため畑トンネルはその陰に隠れがちで、「そんな所もあったね」程度の扱いだった時期さえあった※3。筆者の最初の探索時点でも、地元民でもなければ場所を調べるのにも一苦労するありさまだった。

しかし近年は心霊系のYouTuberの影響で異様にこの場所が持ち上げられており、Googleマップにも場所が載って何十件もの投稿が寄せられる事態となっている(令和2年8月現在)。畑トンネルが心霊スポットと化した当初の活況を、令和になりしくも取り戻したようだ。

また、有名だった旧吹上トンネルも今では照明が換えられて雰囲気がぶち壊しになったことも、畑トンネルの再評価につながっている。今となっては心霊的にオススメなのはむしろ畑トンネルの方であり、立場はすっかり逆転したと言えるだろう。

2. 実際に足を運んでみた

畑トンネルへと続く廃道への入口(クリーンセンター側)

畑トンネルへと続く廃道の入口。こちら側(北側)は畑トンネルの案内看板が設置されている関係からか、物々しい南側に比べて封鎖がほぼされていないに等しい。監視カメラもいくつか設置されてはいるものの、通行者ではなく不法投棄を警戒しているらしく、いずれもあらぬ方向を向いている。

ありがたく看板を読ませてもらったあと、トンネル手前まで見学に行かせてもらおう。

畑トンネルへと続く廃道

廃道へ一歩入ると、周りは山で草だらけだ。こんな道、管理しなければあっという間に草に埋もれてしまうだろう。廃道になっても畑トンネルが貴重な史跡であることに変わりはないので、今でも草刈りなどの最低限の管理はしているものと思われる。

バリケードで封鎖された畑トンネル(クリーンセンター側)

トンネルの手前までたどり着いた。坑口は見事に鉄板でふさがれている。

ただ、こちら側の鉄板はトンネルとの間に隙間がそれなりにあるため、普通体型であれば鉄板の横をすり抜けて中に入ること自体は可能だ。

実際にここを越えてトンネル内に入った方から中の写真をいくつか提供して頂いているので、以下にそれを紹介したい。

封鎖後の畑トンネルの内部

鉄板を越えてすぐの所の様子。トンネル内は白い霧で満たされている。


(▲ この写真は自由にグリグリ動かせます)

霧が比較的少なく壁の保存状態も良い場所で撮影した360度写真。貴重なレンガ巻きのトンネル内部を存分に楽しんでいってほしい。

シミだらけの畑トンネルの天井

このトンネルは天井のいたるところに苦悶の表情を浮かべたシミが浮かび上がっているという。そしてもしその中に「笑った顔のシミ」を見つけてしまうと死ぬと言われているが……

畑トンネルの天井にあった笑った顔のシミ

筆者は見つけてしまった、その笑うシミを……。ただ今だに私は死んでいないので、写真の中ではなく現地で自らの目で実際に見つけないと効果が無いものと思われる。

畑トンネルの内部から見た南側のバリケード

トンネルの反対側までやってきた。

冷たく静かなトンネル内に白い霧がやさしく輝いていて、とても幻想的な光景だ。これは心霊スポットというよりも、まるでパワースポットのような雰囲気である。

畑トンネル内に巣食ったクモの巣

ここを通り抜ける虫を狙って、クモが巣を作っている。バリケードを支える鉄パイプがちょうど良い足場になっているようだ。

こちら側の鉄板とトンネルの壁との間は手のひらほどの隙間しかないため、これ以上は先に進めない。以下に、トンネル封鎖前に撮ったこの先の様子をいくつか載せておく。

畑トンネルの坑口(南側)

封鎖工事前のこちら側のトンネル坑口の様子。記事冒頭のクリーンセンター側(北側)と違い、草が生い茂っていて見通しがとても悪く、トンネルがほぼ見えない。

畑トンネルへと続く南側の山道をふさぐ倒木

南側の道は北側に比べて全体的に荒れていた。倒木もそこら中にあり、どうやって進んだものかそのたびに頭を悩ませた。

畑トンネルへと続く南側の山道の脇に倒れかかっている朽ち果てた30キロ制限の道路標識

道路脇には朽ち果てた30キロ制限の道路標識が倒れかかっていた。他にカーブミラーなどもあり、現状からは信じがたいがここは昔は車も普通に通れる道だったということだ。

【廃墟Data】

状態:トンネル坑口が鉄板で封鎖。さらに南側は旧道入口がゲートで閉鎖、監視カメラあり。北側にも監視カメラあり。

難易度:★★★★☆(高い)

駐車場:なし

所在地:

  • (住所)埼玉県飯能市下畑
  • (物件の場所の緯度経度)35°50'42.1"N 139°17'37.9"E
  • (アクセス・行き方)圏央道「青梅」ICを降り、料金所を出て2つめの信号の「青梅インター入口第二」交差点を右折して都道44号線(岩蔵街道)へと入る。4kmほど進むと「新岩蔵大橋」交差点で44号線は終わるので、そこを右折して都道28号線(小曽木街道)を「飯能」方面へと進む。2kmほど進むと「下畑」交差点に着き、直進して193号線に入ると畑トンネルへの南側からのアプローチ、右折して山を越えると北側からのアプローチとなる。なお、どちら側も駐車場は無い。
    アクセスとしては、令和4年現在は実質的に北側から行くしかない。南側は監視カメラが生きており、たとえそれを突破したとしてもトンネル内には絶対に入れない。