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新井さんの家(埼玉県の神流湖畔の心霊スポット)

1. 概要

新井さんの家は埼玉県の神流かんな湖畔にある心霊スポットの廃屋。家に表札が掛かっているわけではないのだが、なぜか「アライさん」と昔から呼ばれている。有名な心霊スポットであり、「狩野英孝の行くと死ぬかもしれない肝試し」でも「Aさんの家」として紹介されている。

ここには一家惨殺のうわさがあり、「狂った父親が斧で家族を皆殺しにした後、風呂場で自殺した」などと言われている。しかしその信ぴょう性はあまりにも薄く、肝心の心霊界隈かいわいにおいてすらあまり信じられていない※1

しかしここが「新井」姓の人物の持ち家であったことはどうやら正しいようだ。その根拠としては、まず建物裏手の墓に「新井家」と刻まれていること。そして、そもそもこの地区に新井姓が多かったという事実がある。確かにこの点についても諸説あるものの、可能性は決して低くはないだろう。

(※ 追記:20年以上前は「新井」と名前の書かれた本などが中にあった、と記事コメントより情報をいただきました。そしてそれらを勝手に持ち帰ると、新井さんから夜中に電話がかかってくると言われていたそうです。)

また、ここが廃墟になってしまった理由や、その後心霊スポットとされた経緯などについては記事の後半で詳しく紹介する。

新井さんの家の場所を示した地図や行き方なども、記事の最下段に記載している。この廃墟は場所がかなり分かりにくいが、ここでは筆者が実際に取ったルートをかなり詳しく解説しているため、このとおりに行けば迷うことはまずないだろう。

2. 実際に足を運んでみた

新井さんの家(心霊スポット) 建物側面

新井さんの家は正面から見るよりも、こうして側面へ回った方がより様子が分かりやすい。見ての通りかなり風通しの良い物件で、この時期はとても気持ちよく過ごせそうだ。家そのものもひどくゆがんでいて、バランス感覚がすごく養われそう。

新井さんの家(心霊スポット) 建物側面クローズアップ

がんばって少し近づいてみたけど、自分にはこれが限界かな……。この心霊スポット、うわさにたがわずメチャクチャ怖い(物理)。

建物の中には2階に上がる階段どころか、遺物らしい遺物もほとんど見当たらない。こんな所に危険を冒してまで入るのは全くリスクと釣り合わない。

記事冒頭でも触れたとおり、20年以上前はまだ家の中にいろいろ遺物があったそうだが、今ではご覧の通りだ。この20年間で新井さんもいろんな人に鬼電しまくったんだろうか……。

新井さんの家(心霊スポット) わずかに残された壁

建材は木と竹と土とわら、以上! この極めて男らしい建物が今もこうして建っているという事実が、筆者にはとても不思議でならない。

新井さんの家(心霊スポット)の裏手にあった山へと続く坂道

新井さんの家の裏手には、山の中へと続く坂道があった。周囲にはこの新井さんの家しかない寂しい場所にもかかわらず、かなりハッキリとした道があるので気になって少し上ってみることにした。

はるか下に見える新井さんの家(心霊スポット)

だいぶ上ってきた。新井さんの家がずっと下のほう(写真中央あたり)に見える。

新井さんの家(心霊スポット) 坂道の途中に見えてきた大きな石垣

山道の脇にすごく立派な石垣が見えてきた。こんな山奥には不自然に思えるほどの規模だ。

「昭和三十三年三月十二日」と刻まれた水がめの跡

石製の水がめがあった。側面には「昭和三十三年三月十二日」と書かれている。

山の斜面に作られた平らな土地

平坦な場所。まず間違いなくここにはかつて建物があったはずだ。ここにも石垣がかなりしっかりと組まれている。

新井さんの家(心霊スポット)の裏手の山にある崩れた建物の跡

かなり上の方まで登ってきたがここにも建物があった跡がある。道はさらに上の方まで続いており、まだまだ痕跡はありそうだ。

しかし今日ここには自分ひとりで来ているわけではないため、相手とも相談して今回はここで探索を切り上げることにした。まさか山登りをするとは思っておらずその準備を一切してこなかった(地図もコンパスも無い)ので、万が一何かあった場合に適切に対処できる自信がなかったからだ。

この集落がいったいどのくらい山奥まで続いているのか気にはなるが……後ろ髪を引かれる思いで我々は山を下りはじめた。

新井さんの家(心霊スポット) 敷地境界線付近

(▲ 写真中央の木々の隙間にかろうじて見えているのが新井さんの家)

新井さんと県道331号線の境目まで戻ってきた。一見すると周辺にはこの廃屋しかないように見える。そのため「山奥にぽつんと一軒だけ」という不気味さから、心霊スポットとして祭り上げられたのだろう。だが実際には、奥の方にも家が沢山あったらしい痕跡を見つけることができた。

3. 廃墟化・心スポ化の経緯

さて、この集落がまるごと廃墟になってしまった理由についてだが、それは目の前に広がる神流かんな湖が関係していると見ていい。この湖は神流川をせき止めてできたダム湖であり、その際に321戸・364世帯が水没している※2。現在湖に沈んでいない新井さんの家周辺は、この時かろうじて難を逃れたのだ。

しかし村のほぼ全域が水没したことにより生活の基盤を失ってしまった。そのため結局はここでの暮らしを維持できず、家は放棄されてしまったのだろう。このあたりの経緯は群馬県の武尊神社(呪いの廃神社)のケースと非常によく似ている。

そして同時にこの神流かんな湖は、新井さんの家が心霊スポットと化した原因にもなっていると思われる。実はこの湖、埼玉でも屈指の自殺の名所なのだ。

神流湖に架かる金比羅橋(自殺の名所・心霊スポット)

湖に架かる写真の金比羅こんぴら橋は、ここから飛び降り自殺をはかる者が続出した。そのため橋の両側に飛び込み防止用のネットが張られているのが写真でも確認できる。さらにこの周辺には、自殺を思いとどまらせるための「いのちの電話」の看板が随所にあるというありさまだ。

そしてこの金比羅橋の目と鼻の先に新井さんの家がある。そりゃあそんなヤバい廃屋があったら、あること無いこと言われまくるだろうな、というのは簡単に想像がつく。

ここに限らずダム湖は心霊スポットとされることが多い。建設によって住み家を追われた人たちの恨みはどうしても買うし、大規模な工事なので事故で人が亡くなることもある。勝手に地形を変えた人間のおごりに対する土着の神の怒りなどもあるのかもしれない。そしてこの新井さんの家もまた、日本のダム建設に踊らされた建物のひとつなのだ。

【廃墟Data】

状態:現況不詳(しょっちゅう解体のうわさが流れてはガセ、という事を繰り返している。それだけこの廃墟の場所が分かりづらいという事だろう)

難易度:★☆☆☆☆(最低)

駐車場:新井さんの家へと至る最後のカーブの内側(橋を渡る直前)に車2~3台分くらいの平地がある(地図:36°07'08.5"N 139°00'20.8"E)。

所在地:

  • (住所) 埼玉県児玉郡神川町大字矢納
  • (物件の場所の緯度経度)36°07'12.4"N 139°00'18.3"E
  • (アクセス・行き方)関越自動車道「本庄児玉」ICより、国道462号線経由で約45分(26.5km)
     料金所を出て分岐を左「国道254号線・藤岡・児玉」方面へと進む。国道は「長浜町」交差点で県道44号線へと接続するので、そのまま直進して県道へ入る(国道をたどらず道なりに進む)。2.5kmほど先で再度国道254号線と繋がるので、右折して国道に戻る。14.5km先の「浄法寺」交差点を左折、そのまま462号線を進む。4km先の「諏訪」交差点を右折してひたすら国道462号の表示を追いかけ続ける。国道は次第に渓流沿いの山道となる。下久保トンネルを抜けてすぐのT字路を右折して県道331号線に入る。県道331号線を神流湖沿いに4kmほど進むと、キロポスト表示「280」を過ぎたあたりで柚木川をまたぐ橋に差し掛かり、左手には砂防ダムが見える。橋の手前のカーブ内側の平地に駐車。徒歩でさらに県道を進んでいくと、160mほどで「新井さんの家」へと至る山道の入口が左手に見えてくる。新井さんの家はその入口から入ってすぐのところにある。