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透明人間の殺人鬼(電波物件・埼玉県入間市)

1. 概要

「透明人間の殺人鬼」は埼玉県入間市にある電波物件。透明人間に命を狙われているという危機感を抱いた住人が、その危険性を周知するために描いた独特の看板群で知られている。

その看板によると、透明人間との出会いはここへ越してきて2~3年が経ったある夜のことだった。なんとなく人の気配がするので寝ていた体を半分起こしたら、そばにのっぺらぼうの人間が立っていた。そして彼はしゃがむような感じでスーっと消えていったという。

それ以来17年間、透明人間にはさまざまな嫌がらせを受けたらしい。いわく彼はカギ空けのプロで、超音波やマイクロ波を放ち、下の家に住んでいる二重人格のキチガイ野郎だと当人は主張している。そしてついに令和2年3月25日、自宅に火を着けられて敷地が全焼してしまう(後述)。

こうした長年にわたる被害があり、警察にも再三訴えてきたにも関わらず、狭山警察署はまったく動いてくれなかったという。

それでは以下に詳しく見ていくとしよう。

2. 実際に足を運んでみた

「福永」さんのポストと山道

「透明人間の殺人鬼」までの道のりは、山の中を通る遊歩道になっている。そしてその遊歩道の入口付近には、上の写真のように福永さんのポストが設置してある。

くだんの物件は、この福永さんがアトリエとして使うために引っ越してきた家だという話だ。そのため昔は廃墟だったが、今もそうというわけではないらしい。

福永さんからの山歩きの方に向けた注意書き

遊歩道を少し入った所のガードレールには、この福永さんからの注意書きがくくり付けられている。それによると「頭上のもたれかかっている樹木に注意して歩いてください」とのこと。

それに続く「役所の方で始末するのに時間がかかるそうです」という言葉からは、そこはかとなく彼の怒りのような感情が感ぜられる。

電波物件「透明人間の殺人鬼(福永さんのアトリエ)」外観

つづら折りを上っていくと、ほどなくして福永さんのアトリエ(透明人間の殺人鬼)にたどり着いた。だが、私の知っている様子とはかなり違っている。

これは2019年1月時点のGoogleストリートビューである。4体の大きな白い彫像がこちらにお尻を向けて立っているのが見える。これが本来のここの姿なのだ。

いったい何があったのか……。その答えは意外にもすぐに判明することになる。

電波物件「透明人間の殺人鬼(福永さんのアトリエ)」の火災の顛末を書いた看板(火をつけられました……(以下略))

えっ……をつけられた? マジでか……? 看板によると、3月25日の10時頃ゴーという音で目を覚ましたら、彫像が燃えていて家にも火が移ったという。そして必死の消火活動むなしく、敷地は全焼してしまったと。

「透明人間の殺人鬼」の看板があるアトリエ入口付近

写真左奥にはかつて別の「透明人間」の看板があったのだが、それも焼失してしまったのか今は無くなっている。

「透明人間の殺人鬼に注意」と書かれた看板。「そいつは超音波で集めた昆虫をふところに持っている」など透明人間の特徴が書かれている。

(▲ http://hasyagu.blog60.fc2.com/blog-entry-449.html より)

火事になる前までは、上の写真のような「透明人間についての詳しい解説」が書かれた看板がここに掲げられていたのだ。

「透明になる方法」と書かれた看板。うすいダイビングスーツのような物を着て、マイクロ波をかけると透明になるという「スイソク」らしい。参考文献と思われる新聞も貼り付けてある。

(▲ https://ameblo.jp/shizukumama04/entry-11413394900.html より)

「透明になる方法」もご丁寧にリファレンス付きで紹介されていた。

電波物件「透明人間の殺人鬼」の地図

(▲ 国土地理院「入間市仏子ぶし」付近の地図データを元にブログ筆者が作成)

中央のつづら折りの途中にぽつんとある建物が、今回焼失したアトリエ。この山の下の町に住んでいるキチガイ野郎に燃やされたのだと福永さんは主張している。

大黒様と山の中に続く獣道

地図には表示されていないが、アトリエのそばには山の中へと続く獣道がある。

火災の跡が生々しく残る敷地内

獣道から見た旧アトリエ。プレハブ小屋の横にある洗濯機には水道が引かれているのが見え、このような状態でもいまだ廃墟ではなく現役なのだと思われる。

ドロドロに溶けた白いバケツ

ドロドロに溶けてしまったバケツが、当時の火勢の強さを物語る。

坂道の上から見たアトリエの最上部(更地)

山の上の方まで上ってきた。こちらも焼けてしまったのかほぼ更地になっている。

3. アトリエのその後

福永さんへのインタビュー記事

(▲ 福永さんご本人へのインタビュー記事(リンクは下記)。肖像権・著作権保護のためモザイク修正済)

本記事掲載の3ヶ月後に、このアトリエへ突撃して家主である彫刻家の福永さんへ直接お会いした方の取材レポートがWeb上に公開された。

私も拝読したが、福永さんは芸術家らしい芸術家だなという印象を受けた。本記事によれば、火災後のこの地を再建させるべく神殿の建造を目指してもう動き始めているとのこと。普通はこんな火事のあとで打ちのめされそうなものだが、年齢を感じさせない精力的なその姿には驚かされた。

貴重なインタビュー記事なので、皆さんもぜひ一度ごらんになってはいかがだろうか。記事へのリンクは以下より。

「透明人間に17年間も命を狙われている」彫刻家に直撃インタビュー(tokana.jp)

【廃墟Data】

状態:火災により焼失・半壊 現役施設

難易度:★☆☆☆☆(最低) 現役施設なので公道上から眺めるのみ。声をかければ取材も受け付けてくれるようだ。

駐車場:仏子駅前のコインパーキングを利用

所在地:

  • (住所)埼玉県入間市仏子1488-28
  • (物件の場所の緯度経度)35°50'03.0"N 139°21'25.5"E
  • (アクセス・行き方)西武池袋線「仏子」駅から徒歩15分(約1km)。自家用車でアクセスする場合は、近隣の駐車場が住民のものか武蔵野音楽大学のものしかないため、仏子駅周辺のコインパーキングを見つけて駐車することになる。