1. 概要
モーテル風林は千葉県君津市にあるラブホテルの廃墟。ここの特徴はなんと言ってもその内装のハイレベルなこだわりっぷりであろう。
調度品ひとつにいたるまで気が配られていて、それらが織り成すファンタジックで個性的な空間は、見る者をまったく飽きさせない。ラブホの廃墟は世の中にごまんとあり、部屋数も多いのでマンネリになりがちな物だが、ここはそんな退屈とは無縁のオススメの物件と言える。
現地に残されたカレンダーなどから、営業していたのは昭和48年(1973)ごろから平成12年(2000)ごろまでの間と思われる。日本の高度経済成長期の終わりに産み落とされ、その後のバブル期でじっくりと醸成された「昭和のラブホテル」──それが令和の今にそのまま保存されたのが、ここモーテル風林なのだ。
そのため、ある意味で文化財的な価値を持つ廃墟だと言えるかもしれない。現代のラブホテルとは全く違った独特の情緒があり、見る者をまるで社会科見学しているような気分にさせてくれる。
かつてはすぐ隣にホテル山王という廃墟もあったが、こちらはとっくに解体され、現在では更地になっている。また、厳密には「ホテル風林」が正しいようだが、ネット上ではもっぱら「モーテル風林」と呼ばれており、こちらの方が実態にもより即した名前と言えるだろう。
2. 実際に足を運んでみた

モーテル風林の一階部分は駐車場になっており、向かって左側にデラックスルームが、右側にスタンダードルームがそれぞれ並んでいる。駐車スペースはそれぞれの部屋専用で、併設の階段を上っていくと表示の客室にたどりつく。
このように宿泊客どうしが顔を合わせないで利用できるように配慮されているのが、実質ラブホテルである日本の「モーテル」の一般的な造りだ。

個々のガレージ内には、内線電話とシャッターの開閉ボタンが備え付けられている。このように客が自由にシャッターまで閉められるのは非常に珍しいのではなかろうか。少なくとも私はここ以外で見た記憶がない。
確かにこの方が車にイタズラされる心配もなく安心である。

回転ベッドに巨大な姿見──現在ではどちらも消防法や旅館業法・風営法等々に引っかかるので、ほとんどお目にかかることのできないシロモノである。
部屋の内装も天井にはシャンデリア、壁には大理石風のレリーフと物凄い。

(▲ 特デラックス洋室「古都」・宿泊1万2000円、休憩8000円)
モーテル風林で最高級の部屋がこちら。この天蓋付き装飾盛り盛りベッドにシャンデリアが下がってるとかヤバすぎるwww ぜひ現役時に一度来てみたかった!

(▲ スタンダード和室「藤」)
この部屋のお風呂からは富士山を通じて部屋の中を見られるようになっている。まさかこれを「藤」要素だなんて言わないだろうな(笑)
このガラスは片時も離れたくない恋人たちのための嬉しい配慮……かと思いきや、実はこれはマジックミラーになっていて向こう側からこちらを見ることはできない。

(▲ スタンダード和室「桐」)
和洋折衷とは言ってもこれはやりすぎ🤣 日本のことを聞きかじった外人が思いつきで作ったジャパニーズ・ホテルそのもの、といった感じ。
映画やゲームでこんな部屋が出てくることがあるが、まさかの実物を見れて思わず嬉しくなっちゃう。

この提灯も完全に大陸文化のそれだよなあ……。下手にここが日本なので外の庭園の造りにおかしな所はなく、畳がなんちゃって畳だったりすることもないので、まるでシュルレアリスムの絵画を見たときのような不思議な感覚を覚える。

(▲ デラックス洋室「水仙」)
そして凄いのは部屋だけじゃない。風呂の中に庭、だと……? しかも写真中央に見えている金ピカの長方形が実はベッドの残骸で、ここは寝室と風呂を合体させた部屋ということらしい。マジで何考えてんだwww
【廃墟Data】
状態:令和4年現在は、記事中の写真の状態よりも風雨等による部屋の劣化がだいぶ進んでいる様子。
難易度:★★★☆☆(普通)
駐車場:なし
所在地:
- (住所)千葉県君津市南子安1393-2
- (物件の場所の緯度経度)35°19'55.4"N 139°55'33.1"E
- (アクセス・行き方)館山自動車道「木更津南」ICより約4分(2.5km)
高速道路を降りて国道127号線へと合流して直進、約2km先のホテル「555」の角を左折する。そのまま左側の壁に沿って進み、分岐を4つ過ぎるとT字路に突き当たる。そのT字路の正面がモーテル風林の入り口である。