1. 概要
「お札の家」と呼ばれる物件は広島や東京など全国各地に存在するが、その中でも純粋に廃墟として一番有名なのが、この岡山県倉敷市にある「由加山お札の家」だ※1。
かつてこの家では一家心中があり、それ以来ここでは怪奇現象が多発したという。それを抑えるために家の中に大量のお札が貼られたことから「お札の家」と呼ばれるようになった。
昔ながらの日本家屋が荒れ放題になって山中の竹林にぽつりと鎮座しているさまは、まるで絵に描いたような心霊スポットの姿そのものであり、尋常でない不気味さを漂わせている。
2. 実際に足を運んでみた

由加バイパスからお札の家へとつながる脇道に入ると、まず見えてくるのがこの怪しげな石の柱。ただ「七丁」としか書いてないので意味が分からず、「何これ、怖……」とさっそく心霊スポットらしい洗礼を受ける。
実はこれは「丁石」というもので、近隣の由加山蓮台寺までの距離を表している(1丁は約109m)。こういった山岳寺院の参道にはよく設置されているものらしい。

その丁石を過ぎるとすぐ、うわさの「お札の家」が見えてきた。
もうこの時点で雰囲気はMaxで、さすがはあのキューピーの館を擁する岡山の有名スポットなだけはあるな……! と、探索のテンションは否応なしに上がった。

玄関から入ってすぐ左手には居間がある。経年劣化と人為的な破壊が入り混じって、中の荒れ果て具合はすさまじいことになっている。
しかし「家の壁じゅうにお札が貼られている」という話だったのに、どうも様子がおかしい。少なくともここからは全くそうは見えないのだ。

それから注意深く部屋の壁や落ちている遺物などを見て回ったものの、やはり肝心のお札が見当たらない。そしてひとつも見つけられないまま、建物の一番端の台所まで来てしまった。
……いやいやいや(笑) お札の家にお札がないとか、猫カフェに猫がいないようなもんじゃない? ガッカリなんてレベルじゃないんですけど? それはもうただの「家」でしょwww
これまで上がってきた来たテンションが急速に萎えていくのを感じつつも、気を取り直して家の中のまだ見ていない場所へと向かった。そして家の裏口付近で、ついに筆者はそれを発見することになる。

近くには未使用品っぽい同じお札もあった。この「天地大神」という神様はあまり聞いたことがないが、どうやら「天地教」という新興宗教団体の主祭神らしい。漢字に振った読みがなも筆者が推測したもので、正確なところは不明だ。
お札を文字通り解釈すれば、ご利益には悪疫秡除(タチの悪い伝染病を祓い清めること)や家内安全があるので、このあたりを期待してここの怨霊を鎮めようとしたのだろう。

そして家の梁をよく見ると、他にもお札が貼られているのが見えた。
これは干支の鼠(子)・牛(丑)・虎(寅)と謎の4つの四角、そしてその下に「大国魂命鎮座」と書かれた、手書きのお札だ。
この神様は出雲神話に系譜を持つ非常に古い神様で、国土そのものを神格化したものとされる。要するに恐ろしく位の高い神様で、その力を借りてまで抑えたいナニカがここにはいた、ということだろうか……。

また、別の場所には金色の紙垂のような物も貼られていた。紙垂は神社の神主が持つ祓串に付いていることからも分かるとおり、邪悪なものを祓う力を持つものだ。やはりここには何かがいた(もしくは、いる)と考えるのが自然だろう。
【廃墟Data】
状態:解体済
難易度:★☆☆☆☆(最低)※あくまで物理的な難易度。心霊的な難易度は筆者には評価不能。
駐車場:県道横の空き地を利用(→地図)
所在地:
- (住所)岡山県倉敷市児島由加3136
- (物件の場所の緯度経度)34°29'54.0"N 133°50'55.0"E
- (アクセス・行き方)瀬戸中央自動車道「水島IC」より、県道62号線経由で約10分(8.5km)