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牛首トンネル(宮島隧道)内部探索

1. 概要

牛首トンネルとは、石川県河北郡かほくぐん(富山県小矢部おやべ市)にある心霊スポットである。石川と富山との県境の峠に掘られたトンネルで、正式名称を宮島隧道ずいどうというが、もっぱら「牛首トンネル」の通称で知られている。

なお、本物件は交通量は極めて少ないものの現役のトンネルであり、廃墟ではない。しかし心霊スポットとして非常に有名なため、似た状況の旧吹上トンネルと並んで当サイトでも紹介する運びとなった。

ただし結論から言うと、この心霊スポットの探索は筆者的にはあまりオススメできない。詳しくは記事の後半「3. 評価」にて解説する。

1-1. 牛首トンネルでの心霊現象

この心霊スポットで最も有名なのは「トンネル内にまつられたお地蔵様が血の涙を流す」という怪談話であろう。照明もない暗いトンネル内にお地蔵様が置かれているだけでも不気味だが、今はその首がなぜか取れてしまっているという。

他にも「喪服を着た老婆の霊」や「落ち武者の霊」などのうわさがある。特に後者については、源平合戦の折にこのあたりの土地に平家が落ち延びてきたという伝承が古くからあり※1、それとの関連が指摘されている。

1-2. 牛首という名の由来

国土地理院地図 牛首地区

(▲ 国土地理院「津幡つばた町牛首」付近の地図。右下のトンネルが、くだんの牛首トンネル)

この風変わりな名前の由来は、トンネルを抜けた先にある津幡つばた町の牛首地区から取られている。例の「首のない地蔵」の話を連想させ、心霊スポットとしての不気味さにも一役買っている。

ネット上では「村を護る八坂神社の牛頭ごず大王てんのうが由来」とよく言われるが、これは直線距離で50km以上も離れた石川県白峰しらみね村(旧牛首村)との混同であり、完全に間違いである。そもそもこの津幡町の牛首地区に八坂神社は存在しない。

1-3. 映画「牛首村」との関連

(▲ 牛首村 6秒予告動画 坪野鉱泉編 - 東映映画チャンネルより)

また、2022年2月に公開されたKōki(キムタクの次女)主演のホラー映画「牛首村」の題名は、心霊スポットとしての知名度から考えてもこの牛首トンネル(牛首地区)から取られたと見ていい。

この映画はロケ地に富山県の超有名心霊スポット「坪野鉱泉」が使われたことでも話題を呼んだが、同シリーズの「犬鳴村(福岡県)」「樹海村(山梨県)」と来て、今度は北陸地方が舞台ということだろう。

2. 実際に行ってみた

黄色い注意看板のある牛首トンネル手前の様子

富山県の小矢部おやべ市街から県道74号線を20分ほど行った山の中に、うわさの「牛首トンネル」が見えてきた。

黄色の看板にいろいろと注意書きがあることからも分かるとおり、ここは現役のトンネルである。バイクを手前の空き地に寄せ、徒歩で近づいてみよう。

「宮島隧道」と書かれたトンネル上部の銘板

苔などに覆われて見づらいが、トンネル上部の銘板には「昭和三年七月竣工」「宮島隧道」と刻まれている。右から書かれているのがなんとも時代を感じる。

昭和3年(1928)というと日本ではまだ白黒テレビさえなく、ラジオ放送がようやく始まったばかりの頃である。

富山県側から見た牛首トンネルの内部

ただ、内部は明らかに近代的な改修が施されていた。今でも維持管理がきちんとされているという安心感があり、他の化けトンにありがちな不気味さは一切ない。

壁の構造が前後で違いのある牛首トンネル内部の様子

しっかりとコンクリートで舗装された道が、反射板をきらめかせながら向こう側までまっすぐ伸びている。またトンネルの壁は、真ん中あたりを境に明確な違いがある。

富山県側(手前側)は鉄筋とコンクリート版による補強がされていて、ツルツルの表面が光をよく反射している。いっぽう、石川県側(奥側)はモルタルで覆われていて、光をあまり反射せず暗く見える。

おそらく維持管理の主体(=税金の出どころ)がトンネルの真ん中できっぱりと分かれているのだろう。

台座のみでお地蔵様のいない牛首トンネルの中間点

そしてちょうどその壁の境目に、うわさのお地蔵様が安置されていたとおぼしき台座があった。しかし……

台座のみでお地蔵様のいない牛首トンネルの中間点(別角度)

ごらんの通りお地蔵様は陰も形もない。あるのは飲みかけのアクエリアス(ゴミ)と食べかけのビスコ(ゴミ)のみ、というありさま。

これは私がここへ訪れる3年ほど前の様子だ。

そもそも私の聞いていたこの「首のない地蔵」というのも人為的なものらしく、地元の人が新しいものを設置しては不心得者に壊されるのくり返しだったらしい。

この写真のお地蔵様も実は3代目で、この後にきれいな状態の4代目が新たに設置し直されたという話だ。

(▲ 4代目・5代目が破壊され、6代目を設置し直す様子 - 2020年4月5日)

そしてそれすらも破壊されて今に至るというわけだ。残骸すらないところを見ると、現在お地蔵様は別の安全な場所に避難しているものと思われる。


お地蔵様の台座付近から撮ったトンネル内の360度写真がこちら。天井のボコボコが地味に気持ち悪い(この写真はグリグリ自由に動かせます)。

ちなみにトンネルの出入口付近に見える人影はカメラから逃げ遅れた筆者であり、心霊写真ではないのでご安心を。

石川県側から見た牛首トンネルの外観

トンネルの反対側(石川県側)まで抜けてきた。一応この周辺も含めてお地蔵様を探してみたのだが、その痕跡らしきものすらどこにも見つからなかった。

3. 評価

心霊スポットとして非常に有名なトンネルであるため筆者もわざわざ足を運んでみたものの、はっきり言ってこの物件はオススメできない。その理由は主に以下の2つだ。

理由1:単純につまらない

退屈している女性(イメージ)

まず、いくら私に霊感がないとはいえ、ここはあまりにもなにも感じられなさすぎた。

男鹿プリンスホテルの外観やホテル活魚のネームドルーム(血まみれの部屋焼身自殺の間)など、他の有名スポットでは「なるほどね」と私でも思ったものだ。つまり「霊を感じるわけではないが理解はできた」のだが、ここではそれすらも全くなかった。

その理由を私なりに考察すると、

  • 他の化けトンに比べて直線的かつ短いため、閉塞感がない
  • 現役のトンネルで管理も行き届いているので、不気味さに欠ける
  • なによりも肝心のお地蔵様がいない(2021年現在)

あたりだと思われる。

理由2:不快な気持ちになる

頭を押さえ込む男性(イメージ)

そもそも地元の方が大切に管理しているお地蔵様が、悪ふざけで繰り返し壊されるというのが本当に信じられない話だ。幽霊がどうとかよりも、その糞DQNの神経の方が恐ろしい。

同じ映画「牛首村」の舞台の坪野鉱泉の探索でも同じ感想を抱いたが「生きている人間のほうがよっぽど怖い」というのは、北陸の心霊スポットになくてはならない縛りか何かなのだろうか?

4. まとめ

以上、石川県(富山県)の有名心霊スポット「牛首トンネル」を見てきたが、筆者的には有名なだけの肩すかしな物件であった。探索後にも嫌な気分だけが残り、ほめられる点が見当たらない。

ここに行くくらいなら、同じ小矢部おやべ市と隣の南砺なんと市の境付近にある旧蔵原トンネルの方が、ちゃんとした廃墟で雰囲気も十分なのでずっと良いと思う。

もちろん、本当に霊感のある人からしたらまた違った評価になるかもしれない。なのでこれはあくまで霊感のない人(筆者)から見た感想だということを最後に付け加えておこう。

【廃墟Data】

状態:お地蔵様(6代目)消失(2021年5月時点)

難易度:★☆☆☆☆(最低)

駐車場:富山県側のトンネル出口付近に駐車可能なスペースあり(→地図

所在地:

  • (住所)石川県河北郡津幡町牛首
  • (物件の場所の緯度経度)36°43'51.9"N 136°49'11.9"E
  • (アクセス・行き方)
    能越自動車道「福岡IC」より、国道8号線→県道74号線経由で約20分(13km)。ただし牛首トンネル前後の峠道は冬季通行止めの対象区間なので訪問時期には注意が必要。