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【内部探索】姫川病院 1階(新館:受付・診察室・薬局など)

今後は全5回に渡って、廃墟「姫川病院」の内部をじっくりと詳しく紹介していく。階ごとに記事を分けており、それぞれ以下の通りとなる。

こうした各論ではなく、おおまかな概要を知りたいという場合は、前回のを見るとよい。

本記事の概要

姫川病院の館内地図(1階)

(▲ 姫川病院の1階の見取り図。記事冒頭の写真は、この図の右下の方から病院全体を空撮したもの。)

本記事から2回に分けて、姫川病院の1階を詳しく見ていく。

1階には主に患者の診療にあたるための部屋が並ぶ。また、心霊的に重要な霊安室もこの1階にある。

この建物は構造上2つのエリアに分けられる。すなわち、図の上半分の旧館と下半分の新館である。その間は渡り廊下でつながっている。

新館1階部分の見取り図

本記事で紹介するのは、その内の新館エリアだ。紹介予定の場所を図では白抜きで示した。

ここには主に外来患者を診察するための部屋が並んでいる。つまり、患者としてこの病院にかかった場合、まず最初に来ることになるのがここである。

それでは以下に順を追って見ていこう。

1. 受付・待合室

姫川病院の受付

病院の受付内から待合ホールを見たところ。会計もここで行なっていた。

内科や耳鼻咽喉科側の待合室

廊下の両側には、各診療科の診察室が並んでいる。受付を済ませた患者はこの廊下の長椅子に座って、自分の順番が回ってくるのを待つ。

2. 診察室

姫川病院1階 内科第1診察室

内科の診察室は全部で5つ。ここにはそれが4つ隣どうしで並んでいる。どのブースもなぜか机が撤去されており、シャウカステン(レントゲン写真などを透かして見るための照明装置)と椅子だけが残されていた。

天井からぶら下がっている2つのケーブルは、それぞれ酸素ガスの供給と吸引のためのラインだ。ガスの種類ごとに接続部の色が決まっていて、手術室やICUなどにも設置されている。

内科の診察室に残されていた水銀血圧計

おお、懐かしい。ちゃんと水銀が入っている本物の水銀血圧計だ。今は全自動で測定できる別方式のものや、同じ方式でも水銀を使わないものが主流なので、臨床現場で見かけることはほとんどない。

身近なイメージとしては「いまだに水銀体温計を使っている」というのに近いだろう。水銀は生物や環境への負荷が大きいため、今ではこの種の計測機器は製造も輸入も禁止されている。

姫川病院でも実際には他の血圧計を使っていて、引き取り手のなかった古い水銀式のものだけがこうして取り残されたのだとは思うが……。

木製の身長計

ここにも懐かしいものを発見した。なんと木製の身長計。私が最後にこれを見たのは小学校の保健室だ。

しかしここは仮にも地域の中核病院なのだが……経費削減の締め付けが相当キツかったのだろうか。

耳鼻咽喉科の診察台

耳鼻咽喉科の診察台。機械がごちゃごちゃしていてカッコイイ。

ネブライザー用のアダプター

ラックにはネブライザー用のアダプターが出番を待ったまま取り残されていた。これは薬剤を霧状にして鼻から吸い込むために使われる。

泌尿器科の診察室

泌尿器科の診察室。浸水がひどく状態が悪い。

泌尿器科の診察台

隣の部屋には診察台が置かれていた。患者をM字開脚させるための支えがあるのが特徴的。

Ultracision (CS-14C)

ここには内視鏡手術用の機械が大量に残されていた。泌尿器科は他科に比べて内視鏡手術の割合が高い。皮膚を大きく切り開くことなく手術が行なえるので、患者の負担が少ないのが利点。

眼科の診察室

眼科の診察室。ここは病院内でも特に浸水がひどく、状態がきわめて悪い。

現役時は眼科らしい部屋だったのかもしれないが、ここから当時の様子を想像するのは難しい。

3. 事務局

姫川病院の事務局

眼科の隣は事務室になっている。

姫川病院の病院長である神保正樹氏の経歴書

おっまwww 職員の個人情報がまるまる残っとるやんけwww 処分してけって! 廃墟マジで恐いわ😱

これは病院長だった神保氏のデータだ。彼は国立医大を卒業後、内科医としていくつかの病院を経験。姫川病院へは開院から3年後の平成2年(1990)に移ってきたようだ。

姫川病院のとあるバイト医の経歴

とあるバイト医の経歴。富山医科薬科大学(現、富山大学医学部)の医局から姫川病院へと派遣されていたようだ。

医師の給与一覧

なんと給与表までそのまま残されていた。この写真は医師の給料のページ。さすがに金額以外の項目は私の方でモザイク修正をかけてある。

ここに書かれている数字は銀行振込額なので、税引き後の手取りだろう。下の方の10万や30万というのは、バイト医の報酬だ。

看護師の給与一覧

これは看護師さんのページ。給与幅はだいたい月22~32万円といったところ。婦長(看護師長)になると、最高で39万円もらえたようだ。

しかし看護師の給与とか相場がぜんぜん分からないのだが……ガッツリ夜勤までやればヒラでも手取り30万円を越えて、これとは別にボーナスも出る、と考えればそう悪くはないのかな?

少なくとも姫川病院の食堂に残されていた、ハローワークからのふざけた求人よりかは断然良い(次回更新記事にて後述)。

4. 薬局

姫川病院内の薬局

姫川病院内の薬局はいくつかの部屋に分かれているが、そのうち一番広いメインの部屋がこちら。ここでは主に入院患者用の薬を調剤していた。

集塵装置付きの棚に並べられた薬瓶

集塵装置付きの棚には、薬瓶に入れられた散剤(粉薬)がキレイに並べられている。

非常に古い型の自動分包機

棚から取り出して計量した粉薬は、自動分包機を使って1回分ずつ小分けされる。

たとえば写真のこの装置。中央の漏斗ろうと部分に薬を流し込むと、あとは均等に自動で分割してくれる。ただ、こんなに古い型を筆者は見たことがない。

やや古い型の自動分包機

これも古い型だが、このくらいなら今でも使っている薬局はたくさんあるはずだ。この装置は上の穴には錠剤やカプセルを、下の溝には粉薬を入れて使う。

欠点は毎食後の処方だと1週間分までしか一度に調製できないこと。

薬局内に残されていたアンプルの数々

隣の部屋にはアンプル剤が多数残されていた。細いやつはくびれた所でガラスを折り取って使い、太いやつはフタを取り外してゴム栓に注射針を刺し込んで使う。いずれも1回使い切り。

しかしこの薬局で気になるのは、置いてある薬が粉やアンプルばかりで、肝心の錠剤とかカプセルがまったく見当たらない点。たとえ入院患者のみの処方だとしても必要だと思うのだが……

姫川病院内の和漢調剤室

そしてこの病院には「和漢調剤室」なるものまで存在する。すなわち、漢方薬専用の部屋だ。

既製品の漢方薬が納められている棚

この棚には、ツムラや小太郎などのメーカーが販売している出来合いの漢方薬が並んでいる。まぁ、このくらいならどこの薬局にもあるが……

冷蔵庫内にしまわれた刻み生薬

この病院の凄いところは、写真の刻み生薬を使って漢方薬を一から製造していた形跡があること。ここまでするのは、専門医がいて漢方に相当力を入れている病院か、専門の漢方薬局くらいだ。

イメージとしては、出来合いの漢方薬が市販のインスタントコーヒーならば、こちらは専門店のバリスタが豆をブレンドして挽いてくれたコーヒーにあたる。手間もお金もかかるが個人個人に合わせた高品質なものができあがる点も同じだ。

しかし写真を見てわかる通り、生薬の袋は未開封品ばかりが目立つ。少なくとも病院の末期はここまで手が回っていなかったようだ。また、こうしたオーダーメイドの漢方処方は採算を取るのが難しいので、経営悪化のためあえて打ち切った可能性もある。

冷蔵庫内に残されていたトリカブト

ちょ、トリカブト残っとるやんけwwwww 普通に人死ぬぞこれ😱

ブラジルの廃病院であった放射性物質の被爆事故※1とかもそうだけど、廃墟マジで怖いな……

湯剤を煎じるための電熱ヒーター

刻み生薬を使った漢方薬はほとんどがせんじ薬なので、こういった機械で熱をかけて成分を煮出してから服用する。

出来合いの漢方薬も、本当はお湯に溶かしてから飲むのが良いとされているが……今そんな面倒なことをしている人が一体どれだけいることやら。