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カローラ山荘

概要

カローラ山荘(迦楼羅かるら山荘)とは、青森県八戸市にかつてあった精神病患者のための療養施設の廃墟である。

ここで行なっていたのはゴリゴリの投薬治療ではなく、芸術療法や作業療法などを通じて病状の改善を図るものだった。彼らの精神世界が産み出す独特の彫刻群は、ここが廃墟となった後も敷地内に残された。

もともと異様に見えるそれらの彫刻が暗い山林にぽつりぽつりと立っているさまは、それだけでかなり不気味であった。そしてここが精神病患者のための施設だったことも相まって、カローラ山荘は全国的によく知られた心霊スポットへと祭り上げられた。

心霊的なうわさとしては「たび重なる虐待の末、死んで森に埋められた患者たちの怨霊が成仏できずにさまよっている」などとよく言われていた。ただし先述のように、ここは患者の薬漬けや身体拘束をむしろ否定した施設であり、虐待の事実は全くない。

令和4年(2022)現在では、惜しむらくも建物や彫刻群はすべて解体されてしまい、跡地は更地になっている。

解体前の探索記録

カローラ山荘の入口付近の廃車

カローラ山荘のある森の中に入ると、まず出迎えてくれるのがこの廃車である。一説には「これはトヨタの4代目カローラであり、これが『カローラ山荘』の名前の元ネタである」と言われていた。

しかし本当の由来は仏教の神様の名であり、完全にでっちあげである。というか筆者は完全にだまされていたクチで、後年になって初めて真実を知った。

以前どこかのサイトでこの説を見た記憶が確実にあるのだが、昔は多かった廃墟サイトも今や大量絶滅してしまい、もはやそのサイトも見つけられなかった。ったく、逃げやがったな……。

(※ そもそもこの廃車はカローラですらなく、日産から出ていたブルーバードバンの7代目とのことです。記事コメントより情報を下さったNoNameさん、どうもありがとうございました!)

森の中に突然現れる西洋風のアーチ

廃車を通り過ぎてさらに森の奥へと進むと、白い西洋風のアーチが見えてきた。

西洋風の庭園の中に佇む女性の像

ここでは妖しい3人の美女たちが、そのなまめかしい肢体を思う存分さらけ出していた。

※ 写真のモザイクは画像をタップ(クリック)して開くと消えます。以下同じ。

胸に手を当てる女性の像

胸に手を当てている女性。黒のネックチョーカーがおしゃれ。

安倍元首相似の女性の像

この子はなんとなく安倍元首相※1に似ているので、私は現地で「アベさん」と勝手に呼んでいた。

カローラ山荘へと続く獣道

さて、それでは美女エリアを抜けて「カローラ山荘」本体へと行こう。

カローラ山荘の外観。軒下に蝶のマークが描かれている。

これがその「カローラ山荘」である。カローラとは迦楼羅かるらなまったもので、これはインド神話のガルダ(神鳥ガルーダ)由来の仏教の神様の名である。どうも山荘の近くにこの名を冠する寺が当時あったらしい。

ちなみに軒下に描かれている蝶は、カローラ山荘のシンボルマークである。「今は毛虫のごとく嫌われていても、ここから飛び立つときは美しい蝶になれ」という意味が込められているそうだ。

この蝶は、もともとは青南病院という精神病院の意匠だったらしい。そしてその病院は、カローラ山荘を開いた医師が院長を務めていたとのこと。

山荘の脇に並べられた古代アステカ風のレリーフ

カローラ山荘の周囲には、怪しげな古代アステカ風の石版が並ぶ。

男性の肩に手を置き、甘い言葉でそそのかす悪魔の像

また、入口のすぐ脇には人間をなぐさめるようにしてそそのかす悪魔の彫像が置かれていた。このワルそ~~~な表情がたまらんな!

悪魔に囁かれ、胸に手を当てて逡巡する男性の像

善良そうな彼は、まだ悪に染まる決心がついていないように見える。

作業小屋の出入口

カローラ山荘そのものはALSOKの警備が入っており、勝手に建物の中へ入ることはできない。

それで山荘の周囲を探索してみたところ、他にも完全に放棄された建物が点在していた。写真は山荘から一番近くにあった小屋だ。入口の上の方には「Since 1986」と書かれた板が掲げられている。

作業小屋の内部。大きなテーブルが2つと、ストーブが置かれている。

小屋の中には、丸太を切って作られた手作りの大きな作業台が2つ置かれていた。左には暖を取るストーブとベンチも見える。往時はここで患者たちが美術品の制作に取り組んだのだろう。

山林の中にぽつりと建つ共同浴場跡

作業小屋を後にしてしばらく森を進むと、今度は別の建物が見えてきた。

温泉のマークが壁に書かれた建物

この建物は壁に温泉のマークがデカデカと描かれている。おそらく共同浴場だったのだろう。

草でいっぱいの浴槽

浴槽は草でいっぱいだ。

三角屋根のコテージ

ここには宿泊用のコテージのようなものが並ぶ。

森に飲み込まれようとしている廃バス

森に飲み込まれようとしている廃バス。

白い女性の胸像

このように唐突に彫像がドンと置かれているので、結構ビックリする。

不動明王像

おお、いかにも仏教の神様っぽい。不動明王かとも思ったが、どうやら蔵王権現ざおうごんげんという神様らしい。右手と右足を上げたポーズが特徴的な日本独自の仏で、スキー場や樹氷で有名な蔵王山の名前の由来でもある。

(記事コメントより情報を下さったあぐさん、ありがとうございました!)

二人の金髪の女性が描かれた壁画

立像をはじめとした彫刻作品が大勢を占める中でめずらしい、彩色の壁画だ。踊る金髪の女性が2人描かれている。

カローラ山荘周辺の深い森

でも実は、私が探しているのはこれじゃないんだよなぁ、と思いつつ山林を歩き続ける。

草むらの先に見える白い像

おっ、あのケツはもしや……?

横から見た中年女性の立像

やっぱりだ! 私はねぇ、キミを探してたんだよ!

正面から見た中年女性の立像

この中年女性の像は、カローラ山荘に数ある彫像の中でも特に有名なものだった。この語りかけてくるような独特の表情が本当にたまらないな(笑)

改めてこうして見ると、たぶん目とくちびるに色を塗ったのが良くなかったんだと思う。無彩色のままなら「どこにでもある普通の彫像」である意味無事に終わっていた気がする。

中年女性の立像の腹回り

う~ん……しっかし、肉付きが妙にリアルだ……。このやたらと良い出来から考えると、おそらくこの彫像は無から彫刻したのではなく、誰かヌードモデルがいたと思われる。

※ 繰り返しになりますが、写真のモザイクは画像をタップ(クリック)して開くと消えます。

【廃墟Data】

状態:解体済

駐車場:なし

所在地:

  • (住所)〒031-0833 青森県八戸市大久保大山22-13
  • (物件の場所の緯度経度)40°29'59.4"N 141°34'54.8"E
  • (アクセス・行き方)
    【自家用車】三陸道「種差たねさし海岸階上はしかみ岳IC」より、約5分(3.8km)。