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ホテルニュー鳴門

1. 概要

ホテルニュー鳴門とは、徳島県鳴門市にあるホテルの廃墟である。鳴門海峡を見下ろす崖にへばりつくように建っていて、ここから見渡せる絶景を売りにしたホテルだった。現在では徳島でも指折りの心霊スポットとして知られている。

1-1. ホテルニュー鳴門の歴史

ホテルニュー鳴門周辺の航空写真(1975年撮影)

(▲ できたばかりの頃のホテルニュー鳴門と鳴門スカイライン - 国土地理院の航空写真を元にブログ筆者が作成)

ホテルの目の前を通る県道183号線(旧・鳴門スカイライン)は、昭和46年(1971)に開通した。昭和50年(1975)の航空写真には、道が切り開かれてまだ間もない様子の道路のそばに、ホテルニュー鳴門の姿がはっきりと写っている。スカイラインの開通と時を同じくして、本ホテルも開業したものと見ていいだろう。

その後平成8年(1996)には、それまで有料だった鳴門スカイラインが無料開放された。そのためニュー鳴門もいよいよこれからが稼ぎ時……かと思いきや、この頃にはホテルは廃業していたらしい(90年代前半に閉鎖したと言われる)。

そもそもこの無料化も、需要がなさすぎての苦肉の策だったとされる。場所的にもわざわざ高速道路を降りてまで通る理由が見当たらない道であり、いわゆる「無駄な公共工事」の典型だったのだろう。集客の見込めないホテルはその後も買い手がつかず、そのまま廃墟になってしまった。

1-2. ホテルニュー鳴門での心霊現象

飛び降り自殺があったとされる場所を指さす番組キャスト(稲川淳二 四国巡礼・恐怖の現場 Vol.1 より)

(▲ 飛び降り自殺があったとされる場所を指さす番組キャスト - 稲川淳二 四国巡礼・恐怖の現場 Vol.1 より引用。法律上の権利保護のため一部をモザイク修正済)

その後も解体されることなく残っていたホテルニュー鳴門だったが、幹線道路のすぐ脇にあることから非常に目立つ廃墟だった。さらにその違法建築のような異様な図体もあって通行人の興味を引き、次第に心霊スポットとして知られるようになっていった。

そして2010年発売の「稲川淳二 四国巡礼・恐怖の現場 Vol.1」という心霊系DVDでこの廃墟が紹介されると、ホテルニュー鳴門は徳島でも最恐クラスの心霊スポットだとして話題になった。

稲川氏の解説によれば、このホテルの屋上では昔飛び降り自殺があったという。廃墟内でよく目撃される髪の長い女性の霊は、その自殺者の霊ではないかとされている。

また、番組内では特に最下階にある風呂場が重点的に検証されていた。この風呂場は番組内でも不気味な映像が撮れていたが、稲川氏が訪れる前にも雑誌に心霊写真が載った場所とのこと。この廃墟で最も心霊的に危険なのは1階の風呂場と見て間違いないだろう。

2. 実際に行ってみた

ホテルニュー鳴門の5階出入口前

この写真に写っているのは、スカイラインの駐車場から見たホテルの最上階(5階)と屋上である。営業当時、5階はドライブイン(レストランと土産屋)、屋上は展望台として使われていたようだ。

また、ホテルのフロントはここにはなく、崖を降りていった先の2階にあるという変わった造りをしている。

ホテルニュー鳴門の5階内部

ではさっそく中へお邪魔しよう。この階は細い柱がかろうじて天井を支えているのみで、あとは壁も何もなくスカスカだ。

ホテルニュー鳴門の5階からの展望

奥へと進み、鳴門海峡の方を見る。この景色を眺めながらとる食事はさぞ旨かったに違いない。

5階から見下ろしたホテルニュー鳴門の下層階

同じ場所からそっと下の方をのぞき込む。支えも何もなく風も強いので、あやまって転げ落ちてしまわないかタマヒュンな光景だ。

下には今自分が立っている建物にくっつくような形で、もうひとつ建物があるのが見える。どうやらこれが客室棟らしい。

5階から下へと続く建物内の階段

じゃあそっちに行きますか……と階段の所に行ったらこれである。何も分からない初見の下りで、いきなりここに全体重を預けるのはかなり勇気がいる(下りだと踏み抜いた時に体ごとそのまま落ちていくし、最悪帰って来れなくなる)。

無理にここを通らずとも下にはいけるらしいと知っていたので、いったんここは諦めて別のルートを探すことにした。

ホテルニュー鳴門の2階入口

駐車場に戻ってから海側を東に進んでいくと、駐車場から下へと伸びる脇道を見つけることができた。その道をずっと降りて行くと、ホテルの本来の入口へとたどり着いた。

入口の庇に掲げられた「NEW 鳴門」の文字

入口のひさしには「NE(W) 鳴門」の文字が見える。

3階の客室

フロントを抜けて客室へとお邪魔する。瓦礫がれきばかりで、往時をしのぶものは何もない。

オーシャンビューの角部屋

こちらはオーシャンビューの角部屋。料金はきっとお高めだったに違いない。

3階から4階へと続く階段

3階から上の階へと伸びる階段を見上げたところ。先ほど紹介した、降りるのを諦めた階段(4階と5階をつなぐ階段)が上の方に見える。

ホテルの入口まで続く道がかなりしっかりしていたので、探索を終えて戻る時もわざわざあの不安定な階段を使う必要はなさそうだ。

4階の大広間。アコーディオンカーテンが骨組みだけになっている。

階段を上がって4階につくと、そこは大広間になっていた。

4階の大広間。奥には鳴門海峡が見える。

同じ大広間を別角度から。ここからも瀬戸内の絶景を楽しむことができる。現役時はここがホテルの食堂だったのだろう。

外の非常階段は踏み板が抜け落ちている

そろそろ時間切れ(日没)なので、今いる4階から駐車場のある5階へと戻りたい。上へと続くこの外階段も見つけたが、状態はごらんの通りでとても使えたものではない(写真は4階の床板を下から見上げたところ)。

かなり遠回りではあるが、おとなしく2階まで降りてフロント経由で帰ることにしよう。

3. 探索を終えて

廃墟「ホテルニュー鳴門」から臨む、夜の鳴門海峡と大鳴門橋

(▲ 廃墟「ホテルニュー鳴門」から臨む、夜の鳴門海峡と大鳴門橋)

さて、本来であればあれからさらに下の階へと降りていき、他の客室や1階にある風呂場などを探索すべきところだ。しかしあろうことか当時の筆者は「もう暗くなるし、思ったよりボロボロで危ないからもういいや」と思って探索を切り上げてしまった。

言い訳をするならば、ここはこの日に回った最後の廃墟であり、長時間の探索とバイクの運転でもうかなり疲れてしまっていた。それにたとえ探索を続けていたところで、心霊的に一番重要な風呂場へは脚立がないのでたどり着けなかっただろう(当時はそれも知らなかった)。

稲川氏の番組ではスタッフがあらかじめ脚立を廃墟内へ持ち込んでおり、さすがにこれで食ってるプロは用意周到だなあと感心するばかりである。

【廃墟Data】

状態:健在

難易度:★★★☆☆(普通)

駐車場:目の前の中ケ谷駐車場(無料の公共駐車場)を利用(→地図

所在地:

  • (住所)徳島県鳴門市瀬戸町室中ケ谷66
  • (物件の場所の緯度経度)34°14'18.2"N 134°36'44.5"E
  • (アクセス・行き方)
    【自家用車】神戸淡路鳴門自動車道「鳴門北IC」より、県道11号線→県道183号線経由で約8分(6km)