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旧野木病院(心霊スポット)

概要

旧野木病院とは栃木県下都賀しもつが郡にある病院の廃墟である。かつて栃木三大廃病院として恐れられた心霊スポットのうち、令和5年現在も廃墟として残る唯一の物件である。他の2件のうち都賀病院は解体されて墓地に、東洋診療所は改装されて会社事務所にそれぞれなっている。

旧野木病院は昭和60年(1985)5月に「野木厚生クリニック」として開業。主に子どもと老人の心の病を診る精神科の病院だったようだ。それが15年程で閉院すると、残った建物を「グリーンハウス枚方ひらかた」という会員制の老人ホームとして利用する案が立った。しかしその改装工事の途中で計画は中断。開発を進めていた会社もその後倒産してしまった。

元々が精神病院だったこともあり、この廃墟にはさまざまな噂があるようだ。その中でも最も有名な怪談は「白装束の集団が夜な夜な怪しげな儀式をしている」というものである。運悪くそれを目撃してしまうと鎌を持って追いかけられると言われている。

鎌のくだりはともかくとして、過去に白装束の集団がこの廃墟で不審な行為をしていたのは事実らしく、地元住民の間でも伝わる話である。しかしこれを「心霊」と言ってしまっていいのかは、正直微妙なところだ。

実際に行ってみた

旧野木病院へと続く竹林の中の獣道

この竹林を抜けた先に、旧野木病院の廃墟はある。この先には廃墟しかないのに道がしっかりと踏み固められているのは、さすが有名心霊スポットといったところか。

旧野木病院の外観

道をしばらく進んでいくと、木々の間に大きな廃墟が姿を現した。今の時刻は午前4時……空はうっすらと白み始めたが、辺りはまだまだ暗い。廃墟の入口が真っ黒な口をぽっかりと開けて私を待ち構えている。

旧野木病院のエントランス付近

私は意を決して中へと踏み入んだ。すると内部の暗闇の中には、無機質なコンクリートばかりの空間が広がっているのが見えた。

また入口の床をよく見ると、車椅子でも出入りに困らないスロープ状になっていた。ここが病院、もしくは介護施設だったことを確かに思わせる。

旧野木病院の1階ロビー

さらに数歩だけ中へ進み、当時ロビーだったはずの場所を前にする。天窓からわずかな光が差し込んでいるが、廃墟の暗闇はよりいっそう濃くなった。懐中電灯で辺りを照らすと、壁という壁がグラフィティ(絵)とタギング(文字)で埋め尽くされているのが見えた。

旧野木病院の1階厨房跡

ロビーを通り過ぎて、建物の反対側の部屋へと出た。この部屋は床に排水用の溝が掘られており、厨房か何かだったことをうかがわせる。

「塚原 陽南最強」と書かれた落書き

出た、「〇〇最強」。陽南中学校というのが、ここから北に35キロほど行ったところにあるが、そこの生徒だろうか。

旧野木病院の1階から2階へと続く階段

2階へ上がる階段がある。これは行くしかないだろう。

旧野木病院の2階東側の廊下

2階の廊下に出た。辺りは冷たく静まり返っている。

旧野木病院の2階大部屋

建物の正面側の部屋。広さ的に恐らく4~6人部屋だったと思われる。

旧野木病院の2階小部屋

廊下を挟んで反対側の部屋。先ほどの部屋に比べてずいぶん狭いので、こっちは個室だったのだろうか。

旧野木病院の2階に描かれたベルセルクのガッツのグラフィティ

これは漫画「ベルセルク」の主人公のガッツだろう。絵柄にややつたない所はあるものの、無骨な彼の特徴をよくつかんでいる。

あの漫画も完結前に作者が死んでしまったので、たまの新刊が出るたびに話を忘れて読み返す儀式がもうなくなるのかと思うと寂しい。

旧野木病院の2階から3階へと続く階段

それでは最上階の3階へと上がろう。

旧野木病院の3階東側の廊下

3階の廊下。何もなさ過ぎて、まるで建築途中系の廃墟のようだ。本当にここで営業していたとはとても思えない。

旧野木病院の3階トイレ前の壁に描かれた人間のシルエット

トイレの前を通りがかってギョッとした。誰だ、こんなイタズラしたのw

旧野木病院の3階男子トイレ

このトイレの落書き(ト、ト、トイレの花子ちゃん❤)は有名。しかし壁に小便器用の穴が開いているので、ここはたぶん男子トイレだ。

旧野木病院の3階西側の廊下

ん~、イグアナってこんなんだっけ?

旧野木病院の3階大部屋

3階の大部屋。だんだんと外が明るくなってきた。

ダムウェーター(小荷物専用のエレベーター)の近くに描かれた可愛いおばけの絵

小型の荷物用エレベーターの前には、かわいらしいオバケがいた。霊感ゼロの私にもバッチリ見える。

旧野木病院のエレベーターシャフト

一方こちらは人が乗る方のエレベーターシャフト。ここにはオバケはいないようだ。

旧野木病院の3階から屋上へと続く階段。壁には「イタ電上等 0280300110」と落書きされている。

3階の探索はこれでおしまい。それで屋上へ上がろうとしたら、階段の横の壁に「0280 30 0110 イタ電上等」と書かれているのが目に留まった。

0280300110は茨城県警察古川警察署の電話番号

(▲ daigondaigonzews.com より引用)

しかしどうやらこの番号、茨城県警察の電話番号のようだ。これは旧野木病院の隣町にある警察署で、近隣ではもっとも大きい。まったくなんてイタズラしやがるんだ(笑)

「Fvck the police」と書かれた落書き

階段の一番上の床には「Fvck The Police(くたばれポリ公)」と書かれていた。まさかあの番号にかけちゃったんだろうか🤣

ちなみにファックのつづりは正しくはFuckだが、これは間違えたわけではない。いわゆる遠回しな表現というやつだ。

ただ、これはある程度の教養があるか、もしくはこの種のカルチャーにそれなりに詳しくないと知らないはずなので、たぶん日本人じゃなくて外人が書いたんじゃないかと思う。

旧野木病院の屋上

屋上へ出た。まだ太陽は出ていないが、だいぶ空が明るくなってきている。

旧野木病院の屋上に描かれたグラフィティ(スクリームとかぼちゃ)

屋上の塔屋の壁はグラフィティで埋め尽くされていた。そして旧野木病院に数あるウォールアートのうち、ここの作品が最も出来が良い。

旧野木病院の屋上に描かれたグラフィティ(キャンドルと夜の町)

しかし、これはやはり日本人のセンスではないように感じる。

旧野木病院の屋上の機械室内に描かれたグラフィティ

機械室の中も余すことなくキャンバスになっている。

「Soke was here」と書かれた落書き

機械室の出入口には「soke was here!(ソーク参上!)」と落書きされていた。このsokeという人がこれらの作品を描いたのだろうか。

そして筆記体のhereの書き方がかなりこなれていることからも、やはりこの人は外国人なんじゃないかと思う。日本人だとしたらこの種の文化に詳しくてアートセンスもある相当なやり手だ。

(※本記事コメントにて、このSokeさんのものらしきインスタグラムがあることを教えて頂きました。フランス人のグラフィティアーティストのようです。情報どうもありがとうございました。)

旧野木病院の屋上の設備に描かれた可愛いおばけ

塔屋の陰にも、かわいいオバケを見つけた😍

旧野木病院の2階ベランダ

さて、これまでの探索で寄らずにスルーしていた2階のベランダ部分を最後に見てから帰ることにしよう。

旧野木病院の1階の天窓を2階ベランダから見たところ

1階ロビーの天窓を上から見たところ。ここにあったはずの窓枠を支えていた金具らしきものの残骸がいくつか見える。

この廃墟でよく言われるのが「建築途中で止まった」というものだが、これまで見てきた建物の特徴からはむしろ解体の途中で止まった感じだ。

病院だった建物を老人ホームに改装しようとしていたらしいが、これでは内装から何からほぼ全取っ換えで、再利用するのは建物の基礎だけといった感じである。こんな「改装」のやり方が本当に存在するのだろうか……

【廃墟Data】

状態:健在

難易度:★★☆☆☆(低)

駐車場:なし

所在地:

  • (住所) 栃木県下都賀郡野木町佐川野190-1
  • (物件の場所の緯度経度)36°13'37.2"N 139°45'40.0"E
  • (アクセス・行き方)
    【自家用車】圏央道「五霞IC」より、国道4号線→県道190号線経由で約30分(22km)。
    【公共交通機関】JR宇都宮線「野木駅」にて下車、駅より徒歩約40分(3.0km)。