概要
水上温泉(みなかみおんせん)とは、群馬県みなかみ町にある温泉地である。利根川の源流部に位置し、美しい森と渓谷を楽しめる。伊香保や草津とともに、群馬を代表する温泉地の一つである。
しかし現在は廃墟となったホテルが目立ち、お世辞にも活気があるとは言えない状況だ。伊香保温泉にも廃墟は多くメディアに取り上げられることがあるが、街自体には活気があふれており水上温泉とは対照的である。
その水上温泉の惨状を端的に表しているのが、記事冒頭の写真である。ここは温泉街のメインストリートなのだが、日曜日だというのにまるでゴーストタウンのようなありさまである。
温泉街の廃墟といえばお隣の栃木県にある鬼怒川温泉が有名だが、あれはあくまで町の端っこの一部がああなっているだけなのだ。それに対し温泉街の中心部が廃墟だらけの水上温泉には、鬼怒川にはない強烈な絶望感が漂っている。
1. 水上三大廃墟
水上温泉郷にある特に有名な廃墟を3つ、下流側(水上駅側)から順に紹介していく。
1-1. ホテル大宮

JR上越線の水上駅の目の前にある巨大廃墟ホテル。この立地のせいで「温泉街のイメージが悪くなる」と関係者には特に煙たがられている物件である。そのため水上温泉の廃墟と言えば普通はこのホテル大宮のことを指し、メディアなどで言及される機会も多い。
このホテルが廃業したのは、平成元年(1989)4月に起きたエレベーター事故が原因とされている。この事故では宿泊客が5階からエレベーターに乗ろうとしたところそこにエレベーターがなく、15m下の1階まで転落した。
この事故により客は全治6ヶ月の重傷を負い、ホテル大宮は営業停止処分に。そしてホテルは営業を再開することなくそのまま廃業となった。


(▲ この写真は境界線を左右に動かせます)
ホテル大宮のロビー。女性2人組の雰囲気からしてすでにバブル期の香りを感じる。その後の長期の不況しか知らない私のような世代には、なんとも羨ましい世界である。
1-2. 奥利根館

「水上のきぬ川館」とも言える物件がこちら。水上温泉郷で最も規模の大きい廃墟であり、その分見どころも多い。筆者的にはここが水上で一番面白い廃墟だと評価するが、他の2件と比べると知名度は不当なまでに低い。
巨大ホテルの廃墟の例に漏れず、この奥利根館も建物の構造が非常に複雑である。増築に増築を重ねていった様子がホテルの外観からも見て取れ、内部は巨大な迷路と化している。
典型的な団体旅行客向けの大型ホテルであり、2階ぶち抜きの大会議室や100畳を超える宴会場を複数備える。バブル崩壊後この種の旅館が時流にそぐわなくなっていったのは他の記事でも述べた通りであり、この奥利根館も平成23年(2011)に約26億円の負債を抱えて倒産した。


(▲ この写真は境界線を左右に動かせます)
バブル感をひしひしと感じさせる吹き抜けのクラブ。今となっては見る影もない。
1-3. ホテル藤原郷

ダム湖である藤原湖のほとりにある廃墟。ダム観光客向けのホテルとして昭和34年(1959)に開業したが、平成に入り発覚した温泉の偽装問題が致命傷となり、それからわずか数年で廃業に追い込まれた。
全国ネットのテレビ局で心霊ホテルとして紹介されたことから、廃墟としてよりも心霊スポットとして有名であり「浮遊霊の巣窟」などと噂されている。
令和4年(2022)6月には不審火と思われる火事が発生するなど話題を呼んだが、現在の所有者が不明なため町としても手をつけるにつけられない状態だという。
水上温泉郷の三大廃墟の紹介は以上である。以下に各エリア毎の廃墟を個別に紹介していく。
2. 水上温泉エリア(北)の廃墟

温泉街の実質的な中心部である「ふれあい通り商店街」の北端、写真の湯原橋の付近に廃墟が固まっているエリアがある。写真では左端のホテルのみ現役で、見切れているがここから右方向にも解体中の廃墟がある。
まずは写真中央の、壁に家紋のようなものが描かれている廃墟から見ていきたい。
2-1. クラブ・ラヴィリンス(解体中)
2-2. 蒼海ホテル(転用済)
2-3. みなかみホテルジュラク旧館
2-4. 廃吊り橋
3. 水上温泉エリア(南)の廃墟
温泉街駐車場からほど近い、水上温泉エリアの中心部にある廃墟がこちら。みなかみ町としてはこれらの廃墟を大変苦々しく思っているらしく、現在積極的に解体や改装が進められている。
3-1. 白雲閣(転用済)
3-2. 水上観光ホテル(解体済)

先述のホテル藤原郷と同じく、温泉の偽装が発覚した水上温泉郷の旅館のうちのひとつ。そのホテル藤原郷の後を追うように同年10月に廃業した。筆者の探索時では、解体された跡地にホテル「あらたし みなかみ」が建設中であった。
(▲ ホテル「あらたし みなかみ」の外観 - 楽天トラベルより引用)
それがついに令和4年(2022)11月1日にオープン。コンセプトは「新しい滞在のかたち」で、若者や外国人旅行客をターゲットにしているとのこと。運営会社によると「新たな温泉旅やホテルのニュースタンダードを提案する『あらたし』ブランドの第1号施設」だとあり、かなりの意欲作であることが窺える。
しかし宿泊客の評価は賛否両論で、すべり出しはあまり順調とは言えないようだ。主な苦情は施設の備品やサービスに関するもので、「必要なものがない」「スタッフが日本語を解さない」「デザイン優先すぎて案内などが見づらい・分かりにくい」などなど。提供される食事もオーガニック中心で、人により合う合わないがハッキリ分かれるようだ。
逆に高評価なのは「施設が綺麗」という点。しかしこれは新築なので言ってみれば当たり前のことであり、今後施設が古くなった場合このホテルの評価がどうなっていくかは気になるところだ。
3-3. 藤屋(改装中)
3-4. 水上館(現役)
3-5. 寶ホテル(転用済)
3-6. 一葉亭(旧ひがきホテル・解体中)
3-7. 去来荘
4. うのせ温泉エリアの廃墟
水上温泉エリアの一段階上流に広がる温泉地。旅館が所狭しと並んでいた水上エリアに比べて土地に余裕があり、キャンプ場やスキー場なども擁している。
4-1. 水上荘
4-2. 大穴町営住宅
4-3. 桑屋(および大穴スキー場)
5. 湯檜曽温泉エリアの廃墟
うのせ温泉エリアよりもさらに上流に位置する温泉地。他のエリアとは異なりミーハーなレジャー施設などはなく、山あいの静かな風景が辺りには広がっている。
5-1. 本家旅館
【廃墟Data】
状態:ホテル藤原郷は火災により一部損傷。水上温泉エリアの廃墟のうち多くが解体・改装工事中。その他は健在。
難易度:★★★☆☆(普通)
駐車場:温泉街駐車場(無料)を利用(→地図)
所在地:
- (住所)群馬県利根郡みなかみ町湯原704(温泉街駐車場)
- (物件の場所の緯度経度)36°46'11.1"N 138°58'15.3"E(温泉街駐車場)
- (アクセス・行き方)
【自家用車】関越自動車道「水上IC」より、国道291号線経由で約7分(3.8km)で温泉街駐車場着。
【公共交通機関】JR上越線「水上駅」より、県道61号線を南方向(駅を出て左方向)に徒歩約1分(100m)で廃墟「ホテル大宮」着。