1. 概要
王子アルカディアリゾートホテルとは、岡山県玉野市にあるホテルの廃墟である。建築当時のコンセプトは「瀬戸大橋が一望できるリゾート」であり、記事冒頭の写真では右上の方に遠く瀬戸大橋が見えている。廃墟マニアにはおなじみの「リゾート法」※1のもと、平成5年(1993)に約40億円かけて建設された。
建築工事は当時の環境庁主導で行なわれ、その後の内装工事と運営は玉野市の第三セクターが引き継ぐ予定であった。しかしバブル崩壊の影響でその第三セクターが資金不足に陥り、内装工事は中断。その後工事が再開されることはなく、そのまま廃墟となった。
なおこれらの建築費用の大半は、環境庁からの無利子の融資でまかなわれた。そしてこれは元をただせば私たちの税金である。ずさんな計画で工事を進めた結果、ホテルはただの一度も使われることなく、融資したお金はほぼ全額が回収不能となった。
この時代から今に至るまで政府は様々な増税を国民に強いてきたが、そりゃあこんな使い方していればいくらお金があっても足りないでしょう……と、ある種の「答え合わせ」をしてくれるのがこのリゾートホテルの廃墟なのだ。
2. 実際に行ってみた

ホテルの目の前までやってきた。この中央の丸いアーチが目を引く豪華な造りのホテルである。
それにしてもこの白亜の壁にオレンジの瓦屋根、そして紺碧の海──これはジブリの「紅の豚」の舞台にもなった地中海の街並みそのものだ。「アドリア海の真珠」とまでうたわれるその美しい風景を、この瀬戸内に再現したかったのだろう。

その先に何とか入れる場所を見つけて、ようやく中へと潜入できた。ここは先ほどと同じホテル裏側の1階部分にあたる。
それにしても妙な造りの場所だ。いったい何のスペースだったんだろう? ここだけ床を一段わざわざ下げているが……。

なのでぜひこの吹き抜けの部分に降りてみたいのだが、内部の封鎖が完璧でどうしてもそこまでたどりつけない。
──いや、正確には行くことだけはできるのだが、それはいったん飛び降りたが最後、そこからは二度と戻ってこられないルートだった。脱出するにはどこかの封鎖を破壊しなければならない可能性が低くない。
そんな廃墟を故意に傷つけるようなマネしたくないので、結局この美味しそうな餌を前に泣く泣く筆者はあきらめた。

この廃墟、近隣にあるホテル ラ・レインボーに負けず劣らず、なかなかグラフィティのレベルが高い。
【廃墟Data】
状態:健在
難易度:★☆☆☆☆(最低)※ただしエレベーターホールに行くのは難しい
駐車場:王子が岳山頂の公共駐車場を利用(→地図)
所在地:
- (住所)岡山県玉野市永井
- (物件の場所の緯度経度)34°27'52.7"N 133°52'43.0"E
- (アクセス・行き方)
【自家用車】瀬戸中央自動車道(瀬戸大橋)「児島IC」より、県道430号線経由で約25分(11km)