1. 概要
下田富士屋ホテルとは、静岡県下田市にあるホテルの廃墟である。心霊スポットとして非常に有名であり、テレビ局の心霊番組でも何度も取り上げられている。
心霊的には特に「神子元(みこもと)38号室」で不可解な現象が多発するとされている。他にもホテル内の日本人形に触ると呪われるなどと言われている。
しかし令和5年(2023)1月に不審火が発生し、ホテルは3階から上の大部分を焼失。この火災により、くだんの神子元38号室も全焼してしまった。
1-1. 下田富士屋ホテルの歴史
1-2. 心霊スポットとして

廃墟となった下田富士屋ホテルには心霊的なうわさが立った。いわく「赤いワンピースを着た女の霊が出る」だの「誰もいない廊下から足音が聞こえる」だのといった話だ。
また、ホテルの1階ロビーには日本人形が置かれていて、行きと帰りでひとりでに位置が変わったり、髪が伸びたりするという。もしこの人形にさわると呪われてしまうと言われている。
このホテルで特に心霊現象が起こるとして有名なのが、4階の「神子元(みこもと)38号室」である。先述の女の霊や足音の話は主にここでの体験談とされている。
そして、この廃墟はテレビの心霊番組で何度も放送され、多くの心霊系YouTuberも紹介するなど「超」がつく有名スポットになっていった。
1-3. 放火事件
(▲ 火事で炎上する下田富士屋ホテル)
そんな中、令和5年(2023)1月22日の未明に「ホテルが燃えている」と釣り人から通報があった。火はおよそ5時間半後に消し止められ、ケガ人もいなかったとのことだが、ホテルの3階から上は大部分が燃え落ちてしまった。
ホテルは廃墟となって久しく、電気やガスなどの火の元は当然なかった。そして人気のない深夜に火の手が上がったことなども考えると、おそらく火事の原因はここへ肝試しに来た人たちのタバコの火の不始末といった所だろう。
この火災により、肝心の神子元38号室を含む4階は完全に焼失したため、心霊スポットとしてはこのホテルは今後下火になっていくものと思われる。
2. 実際に行ってみた

ホテルの目の前までやってきた。この廃墟のことは以前から知っていたが、モタモタしてる内に心霊スポットとして有名になりすぎてしまい、今まで二の足を踏んでいた物件だった。
それがこのたび「ホテルが燃えた」と聞いて、その後どうなったのかと様子を見に来たのが今回の探索である。

ホテルのエントランス前。これぞ心霊スポットといった面持ちだ。有名物件ではおなじみの黄色いテープが、これでもかと貼られている。


(▲ この写真は境界線を左右に動かせます)
先ほどの扉から入って、まず見えてくるのがこの1階ロビーだ。このすさまじい荒れ果てようも、まさに有名心霊スポットという感じ。まだ営業していた頃と今との落差が際立っている。
また、ロビーでは例の呪われた日本人形のお出迎えがあるとのことだったが……このロビーでもホテル内の他の場所でも、その姿を見ることはついぞ無かった。うわさの38号室と同じく、火事で焼失してしまったのだろうか。


(▲ この写真は境界線を左右に動かせます)
ロビーから階段を上がって2階にはすぐ、この売店跡がある。

隣の部屋には卓球台が残されていた。「温泉旅館と言えば卓球台」というお決まりも、もはや今の若い方には通じないだろう。私の代ですらすでに遊ばれている所は見たことがなく、部屋の片隅で寂しそうにしているというのが彼らの定番であった。

娯楽室で謎のピンク色の自販機を見つけた。たぶん今で言うガチャだろう(ただし中身も排出率も一切不明😂)。「お色気・珍品」とあるので、使用済みの女物ショーツ(自称)でも出てきたのだろうか。
しかしこの機械の中を見てみても当然空っぽで、はっきりとした正体は分からなかった。きっとこれも昭和懐かしの品のひとつに違いない。

「旧館・新館」や「東館・西館」といったそっけない名前ではなく、ちゃんと地元静岡にちなんだ名前がつけられている所に、オーナーのこだわりを感じる。
しかし、下田沖に浮かぶ神子元島から名を取るのはいいとして、下田からかなり離れた浜名湖にある弁天島から名を取ったのは、いったいなぜなんだろう。何か特別な思い入れでもあったのだろうか。

こちらは3階の「弁天26」。ここは恐らく特別室(スイートルーム)であり、広い和室の他にこのホテルではめずらしい写真の洋室もあった。
それにしても、部屋名の数字の2桁目が階数だと予想していたが違ったようだ。そもそも有名な「神子元38」だって4階にあるらしいし。部屋の並びと数字の間に規則性がまったく見えてこない。

崩れる急斜面をどうにかよじ登って、ついにここまで来た。これがかの有名な「神子元38号室」があったはずの4階だ。
しかし現在ではごらんの通りの焼け野原。出るとされるワンピースの女性の霊も、この野ざらしではきっともうどこかへ行ってしまっただろう。不気味な足音がするという怪異も、これではもはや起こりようもない。
(▲ 崩落した下田富士屋ホテルの客室棟 - GoogleMapの2019年7月のストリートビューを元にブログ筆者が作成)
その当時の客室エリアの姿が、昔のGoogleストリートビューに残っている。写真中央の赤丸で囲った部分がそれなのだが、実はこの客室棟、令和2年(2020)7月に経年劣化で丸ごと倒壊し、写真右下の一軒屋を損壊する被害を出している。
(▲ 倒壊した木造の客室棟の解体を報じる新聞記事 - 伊豆新聞より引用 ※著作権保護のため本文をモザイク修正済)
これは当時の新聞記事だが、四角い客室棟がぽっかりと無くなっているのが見て取れる。被害者は保険に入っていたためそのお金で家は修理できたそうだが、廃墟の持つマイナス面が現実のものとなった形だ。

その後、倒壊した木造の客室棟(写真左)は丸ごと撤去された。しかし、鉄筋コンクリート製の浴室棟(写真右)は、解体費用の問題からそのまま残された。
その境目を見た写真がこちらなのだが、大浴場へ行くには赤矢印で示したルートを通るしかなく、外から目立つ事この上ない。そこのバス停にいる老夫婦は、バスよりも先に私の姿を目にすることになるだろう。
そのため、大浴場の探索は断念せざるを得なかった。読者の皆様には大変申し訳ない。

奥の浴室がこちら。先ほどの展望風呂とは打って変わって、展望などまるで望めない暗~い浴場だ。そしてここの名称は、何を隠そう「婦人風呂」。つまりあの展望風呂は男性様専用で、時間帯による入れ替えもなかったと推測できる。
この凄まじい男尊女卑は、こうした古い時代のホテルには非常によく見られる構造だ。かの有名な鬼怒川のかっぱ風呂でも、状況はまったく同じであった。のぞき見を意識してのことだとは思うが、それにしたってあんまりなのがこの時代のホテルの特徴である。
──以上で今回の探索を終える。この廃墟は他にも「地下室で嫌な視線を感じる」などと語られることがあり、実はその入口もフロントの裏手に見つけてある。
しかしそこへ降りるハシゴが木製なのを見て、私は踏み抜きからの遭難リスクを考えてこれ以上の探索は行なわなかった。火災後の現状のレポートとしては、ここまでの内容でも十分だと自負している。
3. 余談
普段は記事で撮影の裏側を見せる事はほとんどないのだが、この廃墟ではいくつか紹介しておきたい事があるため、以下に少し触れておく。
廃墟そのもの以外に興味のない方は、本章を読み飛ばして頂いてまったく構わない。
3-1. 廃墟周辺の状況
3-2. 下田バーガーについて

さて、廃墟の周りはあのような状況なので、朝の早いうちに道の駅に車を駐めて、それからゆっくりと廃墟を楽しむのがいいだろう。
そしてその道の駅では、写真のお店のご当地グルメ「下田バーガー」が名物である。私もそれを食べにここへ来たら、たまたま目の前に廃墟があっただけなので仕方がない。
【廃墟Data】
状態:半焼半壊
難易度:★★★★☆(高)
駐車場:「道の駅 開国下田みなと」駐車場を利用(→地図)
所在地:
- (住所)静岡県下田市柿崎3-15
- (物件の場所の緯度経度)34°40'31.8"N 138°57'06.1"E
- (アクセス・行き方)
【自家用車】伊豆縦貫自動車道の下田側の終点より、国道414号線経由で約20分(13km)。
【公共交通機関】伊豆急行線「伊豆急下田駅」にて下車、駅前よりバスで約5分。バス停「道の駅 開国下田みなと前」にて下車すると、すぐ目の前に廃墟がある。系統は次のいずれの系統でもよい。S05「白浜海岸・河津駅」経由「稲取高校上」行き、S30・31・32「白浜海岸」経由「坂戸一色」行き、S40・41・43「須崎海岸」経由「爪木崎」行き。