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焼肉要塞(ブロックアート)

概要

焼肉要塞とは、神奈川県真鶴(まなづる)町にあるレストランの廃墟である。海の見える焼肉店としてオープンする予定だったが、建築途中でその計画は頓挫。後にはコンクリートがむき出しの廃墟だけが残された。その無骨な姿は、確かに湾を防衛する要塞を思わせる。

この廃墟はまたの名を「ブロックアート」という。コンクリートブロックを積み上げて造られた建物が、一面ウォールアートで覆い尽くされている様はまさに「ブロックアート」であり、なかなか言い得て妙な二つ名である。

一般的に落書きは美観を損ねるため廃墟業界においては嫌われ者だが、この廃墟では逆にその落書きこそが主役である。質の高いグラフィティが地上4階に渡って所狭しと描かれており、まるでひとつの巨大な美術館のようだ。

グラフィティの質・量共にこのレベルに達している廃墟は他に現存せず、独特の楽しみ方ができる廃墟としてとても貴重な存在である。

実際に行ってみた

焼肉要塞(ブロックアート)の外観

焼肉要塞の目の前までやってきた。この廃墟は崖っぷちに建っているので入口が最上階(4階)になっており、奥に進むにつれて階を下っていくことになる。

それでは、さっそく行ってみよう。

焼肉要塞(ブロックアート)4階の廊下

建物に入ってすぐの最上階の様子がこちら。

4階の個室からの眺め

当初の予定では、この壁で区切られた空間のひとつひとつが半個室になっていて、落ち着ける雰囲気の中で大海原を見ながら焼肉を楽しもうというコンセプトだったのだろう。

タコなどのグラフィティ

そして、元・レストランの廃墟としての紹介は以上である(早い🤣)。先述の通り、この廃墟は素晴らしいグラフィティで溢(あふ)れているので、以下にそれを紹介していきたい。

はだしのゲンのグラフィティ

まず、入ってすぐの4階で目を引いたのはこの「はだしのゲン」だ。原爆ピカの炎が町や人々を焼き尽くす様子が印象的に描かれている。

4階から下へと続く階段

そしてこのレベルの作品が、これより下にビル4階分も描かれているという贅沢! もう今からワクワクが止まらない✨

階段の踊り場の壁に描かれたシシ神様のグラフィティ

そして3階に降りる時に出迎えてくれるのが、このシシガミ様だ。ブロックアートで最も有名な作品がこれだろう。一緒に描かれているタタリ神の躍動感がすごい。

焼肉要塞(ブロックアート)3階の廊下

3階の廊下。

パーマンのグラフィティ(前半部分より)

この階で目を引いたのは、写真の「パーマン」だった。

パーマンのグラフィティ(後半部分)

同じ作品の後半部分。みんなスプレー缶を握りしめているのが何か面白い。

まどかマギカの杏子のグラフィティ(ブロックアート2階)

さらに下の階へ。階段を降りてすぐ目についたのが、この「まどかマギカ」の杏子だ。ひと昔前まではこういう美少女アニメ系の作品は見かけなかったのだが、最近ではそうでもなくなってきた。

グラフィティというのはHipHop発祥の文化であり、陽キャの極みというイメージなのでこの流れは意外である。「Kawaii(カワイイ)」が今や世界共通語となった日本のグラフィティらしい独自性と言えるかもしれない。

エヴァンゲリオンのグラフィティ

同じ階にはエヴァンゲリオンも描かれていた。建物の角を作品にうまく活用している。

ドラゴンボールのブヨンのグラフィティ

そしてそういった活用の最たる例がこれだ。これはドラゴンボールに出てくるブヨンという敵キャラで、体がブヨブヨのため主人公の悟空の攻撃が一切通じない。しかし機転を利かせて部屋の壁に穴をあけると、冷たい外気で体が凍ってしまいダメージが通るようになった、というエピソードを持つ。

体を凍らせた後に悟空がとどめのパンチをしたのもちょうどお腹のこの辺りであり、ダブルで洒落が効いている。ブロックアートで一番有名な絵は先述の通りもののけ姫のシシガミ様だが、私はこのブヨンこそが至高の作品だと思っている。

が、しかしだ……

ブヨンのグラフィティがあった場所に上書きされた絵

まったく残念至極なことに、この作品は後に別のグラフィティで上書きされてしまった。しかもその上書きして描かれた絵というのが、ここに描く意味も必要性もまったく感じられない絵なのだ。

ウォールアートは廃墟以上に諸行無常な面があり、こうして塗りつぶされるのはアーティストも覚悟の上だと以前どこかで聞いた覚えがある。しかしそれにしたって、これはあんまりだろう😭

せめて、元の作品を超えてやるという気概くらいは見せてほしかった。あのブヨンをこれで上書きしようと思えた、その神経の太さだけは認めようか。

焼肉要塞(ブロックアート)の1階

さて、ついに一番下の1階までやって来た。楽しかったブロックアートもここで最後である。

東方Projectのアリスのグラフィティ

グラフィティは上書きされるものだと言ったが、この場所も例外ではない。左正面に見えているのは東方Projectのアリスだろうか? 先ほどの写真で左奥の壁に描かれていた作品は、このようにすっかり塗り替えられている。

それにしてもすごく変わった画風だな……見てると何か不安になってくる感じだ。しかもその雰囲気と表情がまったく合っていないせいで、独特の不安感がさらに増している。

三つ目がとおるの写楽保介のグラフィティ

さらに奥の区画の様子がこちら。ここには昔、写真の「三つ目がとおる」という手塚作品のキャラクターが描かれていた。総じてクオリティの高いブロックアートの作品の中でも、これはそのさらに上澄みレベルのグラフィティである。

ザ・シンプソンズとデスピサロのグラフィティが描かれた一角

そしてこれが同じ場所の数年後の様子だ。元の絵はドラゴンクエストのデスピサロの絵に置き換わっている。

デスピサロのグラフィティを正面から見たところ

このデスピサロも壁の柱や通路の穴を効果的に使った作品だ。その辺りに爪を配置することで絵の立体感をうまく演出している。

以前の三つ目がとおると甲乙はつけがたいが、このレベルのグラフィティで上書きされるなら納得である。願わくばブヨンもそうであってほしかった……

捨てられたスプレー缶の山

この廃墟の床には空のスプレー缶が大量に転がっている。なにしろグラフィティの大きさが大きさなので、スプレー缶の中身もすぐに無くなってしまうのだろう。

そしてそれだけのお金と労力と才能が費やされた作品群であるが……令和6年現在ではそれらの上から落書きが多数され、作品が汚損しているとの報告がある。つまり本記事で紹介したような素晴らしいブロックアートの姿はもう無い、ということだ。

これはもはや事実上の解体に等しく、私がそれを知った時は本当にショックだった。今後ブロックアートに行って作品を生で見たいという方がもしいらっしゃるならば、この事はかなり覚悟しておいた方がいいだろう。

【廃墟Data】

状態:グラフィティの上から不心得者による落書きが多数あり

難易度:★★★☆☆(普通)

駐車場:近隣の駐車スペース(旧駐車場?)を利用(→地図

所在地:

  • (住所)神奈川県足柄下郡真鶴町真鶴1174
  • (物件の場所の緯度経度)35°08'30.2"N 139°09'11.3"E
  • (アクセス・行き方)
    【自家用車】真鶴道路(真鶴ブルーライン)「岩IC」より、県道739号線経由で約10分(4.5km)。
    【公共交通機関】JR東海道本線「真鶴駅」にて下車、駅より徒歩約40分(3.2km)。