人が、その一生を終える場所。
廃墟と化してもなお、厳粛な空気を漂わせる火葬場。
いったいどれだけの人が、ここで最期の時を迎えたのだろうか。
事務机の上には、数珠が残されていた。
火葬場ならではの書類。こうして実物を目にすることは、我々一般人にはそうない。
火葬記録簿が残されていた。住所を見る限り、地元の人達を専門に扱っていたようだ。多くは高齢者だが、中には19歳、26歳などという数字も見え、複雑な気分になる。
炉の背面。こうして冷却しないと熱暴走してしまったのだろうか。古そうな機械だし、閉鎖の背景にはこうした設備の老朽化もあったのだろう。
この廃墟には全体的に、重く、厳粛な空気が流れていた。
「火葬場の廃墟」ともなれば心霊スポットとしてはこの上ない物件なので、廃墟の状態はあまりよくないだろうなと思っていた。しかし蓋を開けてみれば、ここには何かを壊した跡どころか小さな落書きひとつなかった。
やはり、こうして淡々と時間が流れていった廃墟は美しい。